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Law Practise 民事訴訟法 基本問題15:時機に遅れた攻撃防御方法

第1.本問

1. Yは、建物買取請求権(借地借家法14条 )を訴訟上行使しているが、集中証拠調べ終了時点になされており、時機に後れた攻撃防御方法(157条1項)により却下されないか。

2. 157条は、当事者が①「故意又は重大な過失により」②「時機に後れて提出した攻撃又は防御の方法」により③「訴訟の完結を遅延させる」ことが必要となる。

(1) まず、②の「時機に後れて」とは、実際に提出されたより、もっと以前の提出ができたはずであり、しかも提出すべき機会があった場合いう。

本件建物買取請求権は、集中証拠調べ終了前に提出できたはずであると同時に、提出の機会があったものといえ、「時機に後れて提出した攻撃又は防御の方法」にあたる。

(2) 次に、②に「故意又は重大な過失」があることが必要である(①)。

ここで、「故意又は重大な過失」とは、攻撃防御方法の存在を知り、または容易に知りうる場合をいい、攻撃防御方法の性質等を考慮して判断される。

本件で建物買取請求権の行使は、建物所有権喪失すなわち実質的敗訴を前提とした抗弁であり、性質上提出が遅れがちになりうる。しかし、それでも仮定的抗弁として主張可能であり、それを知りまたは容易に知りうるのに提出しなかったことは、「故意又は重大な過失」が認められる。

(3) さらに、上記①②により③「訴訟の完結を遅延させる」場合であることが必要である。

ここで、「訴訟の完結を遅延させる」とは、当該攻撃防御方法に関する審理がなければ、ただちに弁論を終結できる段階にあることである。

建物買取請求権は同時履行の抗弁を伴うことが通例であり、建物時価の審理が必要となり、証人尋問や鑑定等の新たな証拠調べが必要となり、「訴訟の完結を遅延させる」に当たる。

3. 以上より、157条1項の要件を充足し、本件建物買取請求権を却下しうる。

第2.【参考】形成権が訴訟上行使されたときの私法上の効果(却下後の建物所有権の帰属)

1. 本件建物買取請求権が却下された場合、建物買取請求の私法上の効果(建物の所有権の帰属)は残存するか。訴訟上の形成権行使の法的性質が問題となる。

2. 訴訟上の形成権の行使は、私法上の形成権行使とその効果の主張としての訴訟行為という2つの行為が併存し、前者については私法が適用され、後者については訴訟法が適用されると解すべきである。

もっとも、訴訟上の形成権の行使が却下された場合、常に私法上の効果が残ると形成権を主張した当事者に不利益となる場合があり、妥当でない。

そこで、私法上の効果の残存を望まないことが当事者の合理的意思であると解釈される場合には、当該当事者のした形成権の行使は訴訟行為として失効するときに私法上の効果も撤回される条件付訴訟行為であると解すべきである。

3. Yの建物買取請求権が却下され、その効果が残存しないとすると、Yは建物買取請求権をもはや行使できず、買取代金の支払を受けることができなくなる。

そこで、建物買取請求権行使の意思を維持することがYの合理的意思と考えられる。建物買取請求権の私法上の効果も残存すると解すべきである。

4. よって、訴訟終了後の当該建物の所有権はYの建物買物請求権の行使により移転し、Xに帰属する。

 

Law Practice 民事訴訟法〔第2版〕

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