Law Practise 民事訴訟法 基本問題42:固有必要的共同訴訟(1)

1. 合一確定の必要があり、かつ、共同訴訟とすることが法律上強制される訴訟を固有必要的共同訴訟(40条1項)という。この場合、共同訴訟人がそろわなければ当事者適格を欠き、訴えが却下されることになる。

したがって、本件訴訟が固有必要的共同訴訟である場合、Y5が被告として弁論再開の申立てた場合、裁判所には弁論再開の必要性が生じる。

2. そこで、本件訴訟の「目的が共同訴訟人の全員について合一にのみ確定すべき場合」(40条1項)であるかが、問題となる。

(1) 固有必要的共同訴訟の判別基準については、実体法的観点、すなわち管理処分権の実体法的性格から考えると、財産の管理処分権が数人に帰属している場合には、その数人を共同訴訟人としなければ、紛争の実効的解決はありえない。したがって、実体法上の管理処分権の帰属を重視し実体法上単独で処分可能な場合は、訴訟上も個別提起による通常共同訴訟であるが、実体法上全員でのみ処分可能な場合は、訴:訟上必要的共同訴訟となると解する。

もっとも、固有必要的共同訴訟とされた場合、共同訴訟人となる者が1人でも欠けると、その訴訟は不適法となり、また、原告の請求を争わない者も手続的理由により被告としなければならないのは、手続上不経済である。そこで、一定の場合には、持分権、保存行為(民法252 ただし書)、不可分債権(428条)の理論等を駆使して、固有必要的共同訴訟の範囲を縮小し、個別提起を許容すべきと解する。

(2) 本件において、Y1-Y5が負担する債務は、建物収去土地明渡債務であり。可分債務として、各自債務を負う。また、本件訴訟を「固有必要的共同訴訟であると解するならば、共同相続人の全部を共同の被告としなければ被告たる当事者適格を有しないことになるのであるが、そうだとすると、原告は、建物収去土地明渡の義務あることについて争う意思を全く有しない共同相続人をも被告としなければならないわけであり、また被告たる共同相続人のうちで訴訟進行中に原告の主張を認めるにいたった者がある場合でも、当該被告がこれを認諾し、または原告がこれに対する訴を取り下げる等の手段に出ることができず、いたずらに無用の手続を重ねなければならないことになるのである。のみならず、相続登記のない家屋を数人の共同相続人が所有してその敷地を不法に占拠しているような場合には、その所有者が果して何びとであるかを明らかにしえないことが稀ではない。そのような場合は、その一部の者を手続に加えなかために、既になされた訴訟手続ないし判決が無効に帰するおそれもある」(最判昭43・3・15民集22-3-607)。

(3) したがって、本件建物収去土地明渡請求訴訟は固有必要的共同訴訟にあたらない。

3. よって、本件提訴適法であり、裁判所は弁論を再開せずに判決しうる。

 

Law Practice 民事訴訟法〔第2版〕

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