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Law Practise 商法 No.51:会社分割における会社債権者の保護

Law Practise 商法

1. Xは、Y2に対して、詐害行為取消訴訟民法425条)を提起して、リース料残額債権および遅延損害金を請求している。かかる訴えは認められるか。

2. 詐害行為取消権の成立要件は、①被保全債権が存在すること、②債務者が①の発生後に債務者の財産権を目的とした法律行為をしたこと(詐害行為の存在)、③②によって債権者が害されること(詐害性)そして④②について債務者が悪意であること(詐害意思)である。

以下、上記各要件について検討する。

(1) 本件において、①被保全債権たるXのY1に対するX・Y1間のリース契約に基づくリース料は平成20年1月20日以降未払いとなっており、その残額債権が存在する。また、遅延損害金もその発生原因が詐害行為以前に存在している以上(後述)、被保全債権に含まれる。

(2) 次に、②について、新設分割(2条30号)が財産権を目的とした法律行為といえるかが問題となるところ、新設分割は,一又は二以上の株式会社又は合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を分割により設立する会社に承継させることである。また、会社法上、新設分割会社の債権者を保護するための規定が設けられているが(810条)、一定の場合を除き新設分割株式会社に対して債務の履行を請求できる債権者は上記規定による保護の対象とはされておらず、上記規定による保護の対象ともされていない債権者については,詐害行為取消権によってその保護を図る必要性がある。したがって、新設分割も財産権を目的とする法律行為としての性質を有するものであるということができる。

   もっとも、これについては、新設分割は会社の組織に関する行為であり、新設分割を詐害行為取消権行使の対象とすると、新設分割の効力を否定するための制度として新設分割無効の訴え(828条1項10号)のみを認めた会社法の趣旨に反するとの反論も考えられる。しかし、詐害行為取消権の行使によって新設分割を取 り消したとしても新設分割無効の訴えが規定されて いることをもって,新設分割が詐害行為取消権行使の対象にならないと解すること はできないと解する。

   本件において、Y1はX・Y1間の上記リース契約締結に基づくリース料債権は、平成20年1月20日以降未払いとなっているところ、同2月14日にY1を新設分割会社とし、Y2を新設設立会社とする新設分割契約を作成し、同6月19日に効力が発生している。。

   したがって、上記②の要件を充足する。

(3) また、③については、Y1は本件新設分割によって、会社としての実体を失っており、その財産はY2に流出している。そればかりか、XのY1に対する債権はY2に承継されていない。

   したがって、本件新設分割によって、Xが害されることは明らかである。

(4) そして、④の点について、詐害意思は詐害性の認識で足りると解すべきところ、債務者たるY1は、本件行為によって、Xが害されることは当然認識していたものというべきであり、この点についても肯定される。

3. 以上から、Xは、詐害行為取消訴訟によって、リース料残額債権および遅延損害金の限度で本件新設分割を取消し、Y2に対し、その支払いを請求しうる。

 

 

Law Practice 商法〔第2版〕

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