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Law Practise 民事訴訟法 基本問題31:信義則による後訴の遮断

1. Xは、Yに対する前訴の敗訴判決確定後の後訴は、既判力(114条1項)により遮断されないか。前訴判決における理由中の判断である買収処分の有効性に既判力が生じないかが問題となる。

2. ここで、既判力とは、確定判決の判断内容の後訴に対する拘束力であり、判決主文で示された訴訟物たる権利・法律関係についての判断にのみ生じ、判決理由中の判断には生じないのが原則である(114条1項)。

その趣旨は、①当事者間の紛争処理としては、訴訟物たる権利・法律関係についての判断に既判力を認めれば足りるし、②訴訟物たる権利・法律関係について は当事者から十分な攻撃防御を期待しうるから、手続保障充足による自己責任を問いうる点に求められる。

本件において、前訴の訴訟物は所有権移転登記抹消請求権であるのに対し、後訴の訴訟物は土地明渡請求権であり、前訴判決における理由中の判断である買収処分の有効性に既判力が生じないから、前訴判決の既判力は後訴に作用しない。

3. もっとも、両訴訟の目的物はいずれも本件土地であり、前訴の判断が後訴をとの関係において何らの拘束力も有しないとすることは、実質的に同一の紛争の蒸し返しを引き起こし、紛争解決の一回性という訴訟制度の目的を果たしえない。

  そこで、前訴の理由中の判断に何らかの拘束力を及ぼしえないかが問題となる。

(1) 本件土地の所有権がX・Yのいずれに帰属するかは、両訴訟に共通する争点であり、理由中の判断である買収処分の有効性に何らかの拘束力(争点効)を認めることが考えられる。

ここで、争点効とは、当事者が主要な争点として争い、裁判所が審判を下した争点についてはそれを主要な先決問題とする後訴請求で前訴判断と矛盾する判断を禁止する効力である。

しかし①既判力を主文に限定した前述の趣旨に反する。②要件が不明確で訴訟手続の安定性を害するおそれが、③判決理由中の判断に拘束力を及ぼすことを当事者が望むならば中間確認の訴え(145条1項)により既判力を得ることができる。

したがって、争点効は否定すべきである。

(2) もっとも、前訴において当該争点が解決済みであるとのYの信頼の程度や当該争点をめぐるXの手続保障の程度を考慮して、本件訴訟におけるYの主張が実質的に前訴を蒸し返すものと認められる場合には、Yの主張は信義則(2条)により排斥されると解すべきである。

前訴と本訴は、訴訟物を異にするとはいえ、本訴は、①実質的には、同一の目的物を対象とするもので、前訴のむし返しというべきであり、②前訴において本訴の請求をすることに支障もなかったのにかかわらず、本訴を提起することは、③本訴提起時にすでに右買収処分後約20年も経過しており、Yの地位を不当に長く不安定な状態におくことになり、信義則に照らして許されないものというべきである(最判昭51・9・30民集30-8-799参照)

4. 後訴は以上から、後訴は、前訴の関係で信義則に反し認められない。

  

Law Practice 民事訴訟法〔第2版〕

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