Law Practise 民法ⅠNo.21:無権代理と相続
第1.売買契約に基づく履行請求
1.有権代理
(1)X→Aの請求
ア.Stg:売買契約に基づく目的物引渡請求権
イ.Kg:①代理行為 ②顕名 ③代理権授与
(2)Aの反論:代理権授与なし(無権代理) ➡ 追認拒絶
ア.Xの再反論:追認拒絶不可
∵無権代理人の地位と本人の地位が同一人に帰属(→無権代理行為有効=資格融合)
➡しかし、資格併存
∵①相続という偶然の事情により、本人の追認拒絶権・相手方の取消権(115)が奪われる
②そもそも相続は被相続人の生きている場合と同じ法律関係を相続人を通じて維持するにすぎない
➡Aは本人の地位に基づいて追認拒絶権可
イ.Xの再反論:追認拒絶は信義則違反
➡無権代理人が本人を相続した場合においては、自らした無権代理行為につき本人の資格において追認を拒絶する余地を認めるのは信義則に反するから、右無権代理行為は相続と共に当然有効となると解するのが相当であるけれども、本人が無権代理人を相続した場合は、これと同様に論ずることはできない。後者の場合においては、相続人たる本人が被相続人の無権代理行為の追認を拒絶しても、何ら信義に反するところはないから、被相続人の無権代理行為は一般に本人の相続により当然有効となるものではないと解するのが相当である(最判昭37・4・20民集16--955)
ウ.Aの追認拒絶可
(3)結論:Xの追認(115)なき限り請求不可
2.表見代理(109)―追認がない場合
(1)X→Aの請求
ア.Stg:売買契約に基づく目的物引渡請求権
イ.Kg:①代理行為 ②顕名 ③代理権授与表示
(2)Aの反論:Xの悪意・有過失
(3)結論:Xが善意・無過失なら請求可
第2.無権代理人の請求
1.履行請求
(1)X→Dの請求
ア.Stg:民法117Ⅰに基づく目的物引渡請求権(履行請求権)
イ.Kg:①XD間の売買契約 ②DがAのためにすることを示したこと ③Aの追認拒絶
④Dの死亡 ⑤DはAの子
(2)Aの反論:追認拒絶
➡無権代理人を相続した本人は、無権代理人が本条により相手方に債務を負担していたときには、無権代理行為について追認を拒絶できる地位にあったことを理由として、117Ⅰの責任を免れることができない(最判昭48・7・3民集27-7-751)
➡しかし、特定物の場合にも履行責任を認めてしまうと、相続という偶然の事情により追認拒絶を認めないのと同じ結果になり、本人に不当に不利
(3)債権の目的物が特定物であるとき、本人は履行責任を負わず、損害賠償責任のみを負う
(4)請求不可
2.損害賠償請求
(1)X→Dの請求
ア.Stg:民法117Ⅰに基づく目的物引渡請求権(履行請求権)
イ.Kg:①XD間の売買契約 ②DがAのためにすることを示したこと ③Aの追認拒絶
④Dの死亡 ⑤DはAの子 ⑥契約の債務不履行orXの選択 ⑦損害額
(2)Aの反論:表見代理の成立 ➡無権代理人は責任を負わない
∵、無権代理人の責任は表見代理が成立しない場合における補充的な責任
➡無権代理人の責任と表見代理は、互いに独立した制度であると解するのが相当であり、両者がともに存在する場合においても、表見代理の主張をすると否とは相手方の自由であると解すべきであるから、相手方は、表見代理の主張をしないで、直ちに無権代理人に対し117条の責任を問うことができるものと解するのが相当である(最判昭62・7・7民集41-5-1133)*1
(3)Aの反論:Xの過失(117Ⅱ)*2
ア.Xの再反論:「過失」(117Ⅱ)=重過失
∵無権代理人の責任を原因とするものである
➡117Ⅱの明文に反してこれを「重大な過失」と解釈することは、そのように解すべき特段の合理的な理由がある場合を除き、許されないというべきである。そして、無権代理人の責任は、無権代理人が相手方に対し代理権がある旨を表示し又は自己を代理人であると信じさせるような行為をした事実を責任の根拠として、相手方の保護と取引の安全並びに代理制度の信用保持のために、法律が特別に認めた無過失責任であり、117Ⅱの規定は、無権代理人に無過失責任という重い責任を負わせたところから、相手方において代理権のないことを知っていたとき若しくはこれを知らなかつたことにつき過失があるときは、同条の保護に値しないものとして、無権代理人の免責を認めたものと解されるのであって、その趣旨に徴すると、右の「過失」は重大な過失に限定されるべきものではないと解するのが相当である(最判昭62・7・7民集41-5-1133)
イ.あてはめ(過失の有無)
ウ.結論
(3)結論
大幅に加筆・修正いたしました(2016.7.11,0:42)。ごめんなさい。