Law Practise 民法Ⅱ No.14:売買の瑕疵担保責任(特定物)--訂正版
第1.設問1
1.YのXに対する瑕疵修補請求
(1)Stg:570条に基づく完全履行請求権としての損害賠償請求権
(2)Kg
①特定物を目的とする売買契約の締結 →目的物:建物+敷地賃借権
②通常人の通常の注意では発見できない瑕疵の存在
(3)Xの反論:瑕疵担保責任の効果は解除と損害賠償請求に限られる。
※瑕疵担保責任の法的性質・効果
a.特定物の売主の義務は当該目的物を原状で引き渡すことにつきるが、契約当事者間の衡平から法が特別に認めた責任(法定責任説)➡完全履行請求否定
b.特定物・不特定物を問わず、当該契約において予定された性質を備えた目的物を引き渡す義務が売買契約の内容となり、その義務違反により生じる債務不履行責任の特則(契約責任説)➡完全履行請求肯定
2.YのXに対する損害賠償請求
(1)Stg:570条に基づく損害賠償請求権
(2)Kg
①特定物を目的とする売買契約の締結 →目的物:建物+敷地賃借権
②通常人の通常の注意では発見できない瑕疵の存在
③損害の発生及びその額 …履行利益(修補費用 + 転売利益)の賠償
(3)Xの反論
ア.Yの悪意
イ.目的物は賃借権 →賃借権の瑕疵は目的物の瑕疵に含まれない
a.最判平3・4・2民集45-4-349:「建物とその敷地の賃借権とが売買の目的とされた場合において、右敷地についてその賃貸人において修繕義務を負担すべき欠陥が右売買契約当時に存したことがその後に判明したとしても、右売買の目的物に隠れた瑕疵があるということはできない。けだし、右の場合において、建物と共に売買の目的とされたものは、建物の敷地そのものではなく、その賃借権であるところ、…賃貸人の修繕義務の履行により補完されるべき敷地の欠陥については、賃貸人に対してその修繕を請求すべきものであって、右敷地の欠陥をもって賃貸人に対する債権としての賃借権の欠陥ということはできない」
b.学説:借地上の建物が売買の目的物である場合、継続的に使用できる状態で建物を譲渡することが契約の内容であり、敷地が安全性を備えていないときは、敷地の欠陥は賃借権自体の瑕疵として評価される
ウ.損害額は信頼利益の限度に限られる
※瑕疵担保責任における損害賠償の範囲
a.法定責任説 ➡信頼利益の限度
…売主に過失がある場合には、信義則により履行利益の賠償義務を認めるべき(我妻)
b.契約責任説 ➡履行利益も可
3.YのXに対する錯誤無効を理由とする不当利得償還請求
(1)Stg:不当利得に基づく利得金返還請求権
(2)Kg
①原告の損失
➁被告の受益
③①②間の因果関係
④②が法律上の原因に基づかないこと
❶意思表示に錯誤があること
❷❶が法律行為の要素に関するものであること
※法律行為の要素:「その錯誤がなかったら当該意思表示をしなかつたであろう (因果関係)といえるばかり でなく、通常人であつても 同様であろう(重要性)といえなければならない」(大判大3・12・15民 録20-1101等)
(3)Xの反論
ア.原告の重過失
イ.錯誤無効の主張は瑕疵担保の主張に優先するから上記の瑕疵担保責任は否定されるべき
※瑕疵担保責任と錯誤無効の優先関係
a.錯誤無効優先説(最判昭33・6・14民集12-9-1492)
b.瑕疵担保責任優先説
第2.設問2
1.YのXに対する損害賠償請求
(1)Stg:570に基づく損害賠償請求権
(2)Kg
①特定物を目的とする売買契約の締結
②通常人の通常の注意では発見できない瑕疵の存在
③損害の発生及びその額
2.Xの反論
(1)Yの悪意
(2)損害額
第3.【参考】YのAに対する請求
1.YのXに対する修繕義務の履行請求
(1)Stg:賃貸借契約に基づく修繕義務履行請求権
(2)Kg
①賃貸借契約の締結
②使用収益についての合意 or 目的物の性質
③目的物の毀損により収益に障害が生じていること
2.YのXに対する賃借目的物の瑕疵担保責任(559条、570条、566条)
(1)Stg:570条に基づく損害賠償請求権
(2)Kg
①賃貸借契約の締結
②通常人の通常の注意では発見できない瑕疵の存在
③損害の発生及びその額
(3)Xの反論:Yの悪意
3.YのXに対する賃借目的物の瑕疵担保責任(559条、570条、566条)
(1)Stg:570条に基づく損害賠償請求権
(2)Kg
①賃貸借契約の締結
②通常人の通常の注意では発見できない瑕疵の存在
(3)Xの反論:瑕疵担保責任の効果は解除と損害賠償請求に限られる