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Law Practise 商法 No.44:監査役の義務と責任

Law Practise 商法

第1.設問(1)

1.Xは、監査役Yの解任をなしうるか。

(1) 監査役を解任するには株主総会の特別決議が必要であり(339条1項、309条2項7号) 、監査役はこれに対し意見を述べることができる(345条4項)。Xは、これらの手続きを経ることでYを解任しうる。

(2) もっとも、X社の監査役は、Y1名であり、Yが解任前に辞任することで、「なお役員としての権利義務を有する」から(346条1項)、取締役会が選任議案を提出する際にYの同意を得なければならないことになり、Xに居座る可能性が生じる。

その対策として、Xは、一時監査役選任を裁判所に申立てることで(346条2項)、Yの「権利義務」を奪うことができる。

2. では、Yは、Xに対し任期中の報酬請求をなしうるか。

(1) 任期途中で解任された監査役は、未到来の期間に対応する報酬を受ける権利を喪失する。

(2) そこで、Yは、任期中の報酬額相当分の損害賠償請求をすることが考えられる(339条2項)。これに対し、Xは、「正当な理由」(339条2項) の存在を反論として主張することが考えられる。

ここで、「正当な理由」とは、職務執行上の法令・定款違反があった場合や能力の著しい欠如など職務執行に著しい支障がある場合を指すものと解される。

Yは、財務会計の知識に乏しく、監査報告も経理部長の助言のもとに作成し、自ら調査することもなかった。その結果、Bの粉飾決算に気づかず、5000万円の損失を生じさせることとなったのであり、以上の点に「正当な理由」が認められる。

(3) したがって、Yの請求は否定される。

第2.設問(2)

1. Xは、Yに対し、任務懈怠責任(423条1項)に基づく損害賠償請求をなしうるか。

(1) 監査役は、役員として会社に対し善管注意義務(330条、民法644条)を負うところ、423条1項の「任務を怠った」とは、その義務に違反することをいう。

(2) Yは、監査役として、取締役会への出席義務および意見陳述義務を負うところ(383条1項)、毎週開催されている取締役会にも月1度出席するのみであった。また、「株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする」(431条)ところ、会計書類や業務執行の状況を独自に調査したことはなかったのであり、監査役の「任務を怠った」といえる。

(3) したがって、Xは、Yに対し、上記の請求をなしうる。

2. では、その賠償額はどうなるか。

(1) Yは、Xとの間で責任限定契約を締結しており、報酬の2年分である1000万円に限定されるようにも思われる(427条1項・425条1項1号ハ)。

(2) しかし、427条各項のいずれかに該当し、責任限定契約の効力が否定されないかが問題となる。

ア.まず、Yに「職務を行うにつき善意でかつ重大な過失」がある場合 には、責任限定契約は適用されないことになる(427条1項)。

  Yに任務懈怠があったことは上記のとおりであるが、YがBの粉飾決算を見逃したのは、Bの手段が巧妙であったためであり、Yに故意・重過失があったとはいえない。

イ.次に、Yが「株式会社又はその子会社の業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人に就任したとき」には、責任限定契約は将来に向かってその効力を失うことになる(427条2項)。

  Yは、業務執行について時折、Aに助言を与えていたのであり、使用人を兼ねていたようにもみえる。しかし、監査役が業務執行について取締役等に助言を与えたからといって、直ちに使用人を兼ねていたとみるべきではない。しかし、Yは、会計の知識に乏しいが、機械の販路に詳しく、そのためAにXに来るよう請われたものとみるべきであり、事実上使用人を兼ねていたものとみるべきである。

(3) 以上から、Yには責任限定契約の効力は否定され、5000万円の損害賠償義務を負う。

 

Law Practice 商法〔第2版〕

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