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Law Practise 商法 No.55:営業譲渡と商号続用者の責任

1. Yは、本件ゴルフ場を経営するAの会社分割により設立され、A同様「Bゴルフ倶楽部」の名称を用いて、本件ゴルフ場を経営している。そこで、Xは、Yに対して、会社法22条1項に基づき預託金の返還を請求しえないか。

2. 会社法22条1項が適用されるためには、①「事業を譲り受けた会社」(譲受会社)が②「譲渡会社の商号を引き続き使用する場合」であること(商号の続用)が必要である。

しかし、①本件では事業の移転に際して、事業譲渡ではなく、会社分割の形式が用いられている。また、②Yは、「Bゴルフ倶楽部」の名称は用いているものの、Aの商号は用いていない。

したがって、同項を適用しえないのが原則である。

3. では、同項の類推適用はなしえないか。

(1) まず、上記①の点について、22条1項の趣旨は商号の続用がなされる場合、権利外観法理に基づき債権者を保護する点にある。しかし、商号の続用がなくても、事業主体を示す名称を続用する場合、債権者には事業主体の交代を認識することが困難である。そこで、事業主体を表示するものとして用いられている名称が続用されている場合、特段の事情がない限り、「譲渡会社の商号を引き続き使用する場合」と同視しうると解される。

本件において、「Bゴルフ倶楽部」の名称がゴルフ場の事業主体を表示するものとして用いられ、ゴルフ場の事業が譲渡され,Aが用いていたゴルフクラブの名称をYが引き続き使用している。Yは、当該ゴルフクラブの会員によるゴルフ場施設の優先的利用を拒否したなどの特段の事情も存しない。

したがって、「譲渡会社の商号を引き続き使用する場合」と同視しうる。

(2) 次に、会社分割に伴いゴルフ場の事業が他の会社又は設立会社に承継される場合、法律行為によって事業の全部又は一部が別の権利義務の主体に承継されるという点においては,事業の譲渡と異なるところはない。

   したがって、会社分割は「事業を譲り受けた」場合と同視しうる。

(3) よって、Yは、22条1項の類推適用により、Xが交付した預託金の返還義務を負う。

4. 以上から、Xの預託金返還請求は認められる。

 

Law Practice 商法〔第2版〕

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