Law Practise 民法Ⅰ No.36:民法177条の第三者の範囲

1.X1→Y1の請求

(1)Stg:所有権に基づく返還請求権としての建物明渡請求

Kg:①A元所有 ②A→X1の譲渡(登記具備) ③Y1占有

(2)Y1の反論:対抗要件の抗弁不可(未登記)

(3)Y1の反論:X1は悪意 →「第三者」(177)にあたらない

ア.「第三者」(177)=当事者もしくはその包括承継人以外の者のうち不動産物権の得喪および変更の登記欠缺を主張するにつき正当の利益を有する者(制限説・大連判明41・12・15民録14-1276)

イ.「第三者」の主観的要件

(ア)原則:「第三者」の善意・悪意を問わない

∵177条は自由競争の原理の下、取引安全を図った規定

(イ)自由競争の範囲を超え、登記欠缺を主張することが信義則(1Ⅱ)に反するほど背信性を有する者(背信的悪意者)は「第三者」にあたらない

➡背信性は「第三者」の行為の悪質性・目的となる権利の種類などから総合的に決すべき

(ウ)X1 =単純な悪意 →背信性なし ⇒背信的悪意者に当たらない

(4)請求可

2.X2→Y2の請求

(1)Stg:所有権に基づく返還請求権としての建物明渡請求

Kg:①A元所有 ②A→X2の譲渡(登記具備) ③Y2占有

ア.Y2の反論:対抗要件の抗弁不可(未登記)

イ.Y2の反論:X1は悪意 →「第三者」(177)にあたらない

(ア)「第三者」(177)=当事者もしくはその包括承継人以外の者のうち不動産物権の得喪および変更の登記欠缺を主張するにつき正当の利益を有する者(制限説・大連判明41・12・15民録14-1276)

(イ)「第三者」の主観的要件

a.原則:「第三者」の善意・悪意を問わない

∵177条は自由競争の原理の下、取引安全を図った規定

b.自由競争の範囲を超え、登記欠缺を主張することが信義則(1Ⅱ)に反するほど背信性を有する者(背信的悪意者)は「第三者」にあたらない

➡背信性は「第三者」の行為の悪質性・目的となる権利の種類などから総合的に決すべき

c.X2 =Y2への害意

(2)X2の再反論:A→Y2の譲渡の無効(公序良俗違反・90)

➡婚姻秩序を回復するためのものであるから有効

(3)請求不可

 

 補足判例:背信的悪意者からの転得者:不動産二重売買における背信的悪意者からの転得者は、その者自身が第一買主との関係で背信的悪意者と評価されるのでない限り、当該不動産の所有権取得をもって第一買主に対抗することができる(最判平8・10・29民集50-9-2506)

 

Law Practice 民法I 総則・物権編〔第2版〕

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