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Law Practise 商法 No.19:新株・新株予約権の不公正発行

第1.設問(1)

1. XによるYの新株発行の差止請求(210条)は認められるか。

新株発行の差止めの要件は、①210条1号・2号列挙事由の存在および②株主が不利益を受けるおそれがあること(210条柱書)である。以下、各要件について検討する。

2.①について

(1) 本件は、Y経営陣とXとの間で経営方針をめぐる争いが生じていることから、「著しく不公正な方法」(210条2号)の該当性が問題となる。

(2) 201条1項前段が公開会社において取締役会に募集株式の発行等の権限を与えたのは会社の資金調達の必要性に迅速に対応するためである。そうであれば、新株発行の主要な目的が資金調達ではなく、特定株主の持株比率を低下させることにある場合には、不公正発行等にあたると解すべきである。

もっとも、目的の立証は容易でないから、株式会社においてその支配権につき争いがある場合に、特定の株主の持株比率が著しく低下することを会社が認識しつつ募集株式の発行等をしたときは、特段の事情がない限り不公正発行等にあたると解する。

(3) 本件新株発行の結果、Xの持株比率は41.7%から22%へと低下することになる。これに対して、Yからは本件事業計画遂行の必要性が主張されることになり、そこで、本件事業計画の内容が問題となる。

(4) したがって、本件事業計画に合理性が認められない場合、「著しく不公正な方法」に該当することになる。

3.②について

  前述のとおり、本件新株発行により、Xの持ち持株比率は低下する以上、株主たるXは不利益を受けるおそれが存在することになる。

4. よって、XによるYの新株発行の差止請求(210条)は認められる。

第2.設問(2)

1. XのYに対する新株予約権発行の差止請求(247条)は認められるか。

新株予約権発行の差止請求の要件は、①247条1号・2号列挙事由の存在および②株主が不利益受 けるおそれ(同条柱書)があることである。

2.①について

(1) 前述のとおり、本件では「著しく不公正な方法」(247②)の該当性が問題となる。

(2) 新株予約権については、必ずしも資金調達目的で発行されるとは限らないものの、新株予約権発行の規定が新株発行の規定とパラレルに設けられていることに鑑みて、いわゆる主要目的ルールが基本的には妥当するものと解され、現に経営支配権争いが生じている場面において、経営支配権の維持・確保を目的とした新株予約権の発行がされた場合には、敵対的買収者が真摯に合理的な経営を目指すものではなく敵対的買収者による支配権取得が会社に回復しがたい損害をもたらす事情があるといった株主全体の利益保護の観点から当該新株予約権発行を正当化する特段の事情がない限り、著しく不公正な方法による発行として差止請求が認められる(東京高決平17・3・23判時1899-56)。

(3) 本件新株予約権発行の結果、Xの持株比率は41.7%から22%へと低下することになる。これに対して、Yからは本件事業計画遂行の必要性とこれが株主全体の利益となることの主張されることになる。

(4) したがって、Yが本件新株予約権発行の必要性を証明できない場合、「著しく不公正な方法」に該当することになる。

3.②について

  前述のとおり、本件新株予約権発行により、Xの持ち持株比率は低下する以上、株主たるXには不利益を受けるおそれが存在することになる。

4. よって、XによるYの新株発行の差止請求(247条)が認められる。

第3.設問(3)

1. XによるYの新株発行の差止請求(210条)は認められるか。

は、①および②株主が不利益を受けるおそれがあること(210条柱書)である。以下、新株発行の差止めの各要件について検討する。

2.210条1号・2号列挙事由の存在

(1) 本件新株発行により、それまでの支配株主Xの持株比率は20%に低下する一方、Aの持株比率は51.5%になり支配株主の異動を伴う新株発行であると同時に総株主の議決権の数のAの議決権の数「に対する割合が二分の一を超える場合」であることから、株主総会での承認が必要である(206条の2第4項・同5項)。

(2) それにもかかわらず、Yは株主総会決議を経ずに本件新株発行を行うという「法令…違反」(210条2号)がある。

(3) また、本件新株発行により、Xは支配株主の地位を失うとともに、株価下落の不利益を受けるおそれがある(210条柱書)。

(4) よって、XによるYの新株発行の差止請求(210条)は認められる。

 

Law Practice 商法〔第2版〕

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