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Law Practise 商法 No.56:表見支配人

Law Practise 商法

1. Aは、Bの振り出した手形(以下、本件手形)に対しY福岡支店長の名義で裏書(以下、本件裏書)をしている。そこで、Xは、Aが「表見支配人」(会社法(以下、法令名略)13条)であるとして、Yに対する手形金請求をすることが考えられる。

ここで、表見支配人とは、包括的代理権を有しない使用人であって、会社の本店又は支店の事業の主任者であることを示す名称を付した者であり、使用人とは、会社と雇用関係にあることが必要である。しかし、Aは、Yと雇用関係にないことから、表見支配人に当たらない。

  したがって、本件に13条を直接適用しえない。

2. では、13条を類推しえないか。

(1) 同条の類推適用がなされるためには、①「会社の本店又は支店の事業の主任者であることを示す名称を付した」外観の存在、②本人の帰責性(外観への与因)そして③第三者の信頼が必要である。

(2) まず、①Aは本件手形にY福岡支店長の名義で裏書をしており、「会社の本店又は支店の事業の主任者であることを示す名称を付した」外観が存在する。

(3) 次に、②Yは、Aに対し支店長代理の肩書の使用を明示的に許可しているにすぎず、支店長の肩書の使用を許したわけではない。しかし、YはAに対し支店長の権限を包括的に委任し、Aは支店長名義で支店長の業務の一切を行っていたのであり、支店長の肩書の使用を黙示的に許していたといえ、①の外観への与因が認められる。

(4) また、①②に対する③第三者(X)の信頼について、第三者の善意・無重過失が必要と解するところ、Xは被裏書人Cの裏書が正当になされたという言葉を信じているが、仮にこれについてXの善意無重過失が認められるとしても、表見法理における第三者は、当該取引の直接の相手方に限られるものであり、手形行為の場合には、この直接の相手方は、手形上の記載によって形式的に判断されるべきものではなく、実質的な取引の相手方をいうものと解すべきであり、Xは13条ないしその類推適用により保護される第三者には含まれない。

(5) したがって、本件において13条の類推適用はなしえない。

3. 以上から、XのYに対する手形金請求は認められない。

 

Law Practice 商法〔第2版〕

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