Law Practise 民事訴訟法 基本問題38:和解契約の解除  

1. Xは、XY間の訴訟上の和解を解除しうるか。

(1) 訴訟上の和解は、和解調書に記載されると「確定判決と同一の効力」を生じるから(267条)、これを債務名義として強制執行をすることが可能である(民事執行法22条7号)

(2) また、裁判上の和解も和解契約である以上、解除(民法541条)することは可能である。

   もっとも、裁判上の和解が「確定判決と同一の効力」を有することから、解除が既判力により遮断されないかが問題となるも、既判力は事実審の口頭弁論終結時における判断(民事執行法35条2項参照)につき生じ、Yに和解条項の不履行があっても、それは 和解後の権利変動だから既判力により遮断されない。

(3) したがって、Xは、XY間の訴訟上の和解を解除しうる。

2. では、解除の主張はいかなる方法によるべきか。

(1) まず、①新訴提起の方法によることが考えられる。この場合、訴訟資料は利用できないが、審級の利益は確保できるという利点がある。

   もっとも、これによると、解除権行使の効果として、和解によって生じていた訴訟終了効も消滅すると(民法545条1項)、重複起訴の禁止(142条)に抵触しないかが問題となるところ、訴訟が訴訟上の和解によって終了した場合、単に和解契約に基づく私法上の権利関係が消滅するのみであって、和解によって終了した訴訟が復活するものではないと解すべきであり、重複起訴の禁止に抵触しない。

(2) また、②期日指定申立て(93条1項)の方法によることもが考えられる。この場合、旧訴訟資料の利用が可能であり、訴訟経済上も妥当である。しかし和解が上告審でなされた場合、審級の利益を損なうという欠点もある。

(3) 以上のように、①②のいずれの方法にも一長一短があり、両方の方法を許し、当事者の選択に委ねるべきであると解する。

   そこで、Xは、①または②の方法により裁判上の和解の解除の主張が可能である。

 

 

Law Practice 民事訴訟法〔第2版〕

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