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Law Practise 民事訴訟法 基本問題36:訴えの取下げ・再訴の禁止

第1.再訴の可否

1. Xは、Yに対する控訴係属中、第1審の終局判決後に訴え取り下げた後、再度訴えを提起している。かかる訴えの提起は、再訴の禁止(262条2項)に抵触しないか。

2. 以下、Xの再訴が「同一の訴え」にあたらないかについて検討する。

(1) 再訴禁止効の趣旨は、終局判決後に訴えを取り下げることにより裁判を徒労に帰せしめたことに対する制裁という点と同一紛争を蒸し返して訴訟制度をもてあそぶような不当な事態の生起を防止する点にあると解され(折衷説)、「同一の訴え」とは、①単に当事者及び訴訟物を同じくするだけではなく、②訴えの利益または必要性の点についても事情を同じくする訴えを指す(最判昭52・7・19民集31-4-693)と解すべきである。

(2) 本件において、①前訴と後訴は同一の債権に基づく貸金返還請求訴訟であり、当事者及び訴訟物を同じくする。しかし、②Xが旧訴を取り下げたのはYが貸金債務の返還を認めたからであり、再度訴えを提起したのは取下げ後にYが態度を変化させたことで新たに訴えの必要性が生じたためであり、Xの再訴は当事者及び訴訟物は同じくするが、訴えの利益、必要性の点については旧訴と事情事を異にする

(3) したがって、「同一の訴え」に該当しない。

3. よって、再訴は再訴の禁止(262条2項)に抵触しない。

第2.参考:Yが返済しないことを理由とする錯誤無効主張の可否

1. Xは、訴えの取下げの意思表示につき錯誤無効(民法95)の主張をすることをなしうるか。訴えの取下げという訴訟行為に私法の意思表示についての規定を適用することの可否が問題となる。

2. 確かに訴訟法においては手続安定の要請が重要である。とするならば、手続の安定を図るべく、取下げの撤回は許されないようにも思われる。

しかし訴えの取下げは原告の意思を基礎とするものであり、その意思に暇疵があれば訴えの取下げを正当化する基礎が欠ける。また、訴えの取下げはそれを前提として手続が進められることがない以上、無効・取消を認めても手続の安定を害することにはならない。

したがって、訴えの取下げに私法の意思表示についての規定を適用してもよいと考える。

3. よって、本問でも、Xは訴えの取下げにつき錯誤無効を主張することができると解する。

 

Law Practice 民事訴訟法〔第2版〕

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