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Law Practise 商法 No.45:会計帳簿・株式名簿の閲覧請求

Law Practise 商法

1. XのYに対する会計帳簿の閲覧請求(433条)は認められるか。

(1) 会計帳簿の閲覧請求には、議決権または発行済株式の100分の3以上の株式を有する株式であることが必要であるところ(少数株主権・433条1項)、Xは、Yの株式の10パーセントを保有しており、上記閲覧請求をなしうる。

(2) これに対し、Yは、XがYの「業務と実質的に競争関係にある事業を営み、又はこれに従事するものである」(433条2項3号)ことを拒否事由として主張することが考えられる。

ア.これについて、同号は、会社の会計帳簿等の閲覧謄写を請求する株主が会社と競業をなす者であるなどの客観的事実が認められれば、会社は当該株主の具体的な意図を問わず一律にその閲覧謄写請求を拒絶できるとすることにより、会社に損害が及ぶ抽象的な危険を未然に防止しようとする趣旨の規定と解される(最決平21・1・15民集63-1-1)。

そうであれば、「請求者が当該株式会社の業務と実質的に競争関係にある事業」を営む場合とは、単に請求者の事業と相手方会社の業務とが競争関係にある場合に限るものではなく、請求者(完全子会社)がその親会社と一体的に事業を営んでいると評価することができるような場合には、当該事業が相手方会社の業務と競争関係にあるときも含む。また、「競争関係」とは、現に競争関係にある場合のほか、近い将来において競争関係に立つ蓋然性が高い場合をも含む(東京地判平19・9・20判時1985-140)と解される。

イ.Xは、通信販売業であるが放送事業への進出を目指しており、放送事業を目的とするYとは競合関係にたつ蓋然性が高いといえる。

ウ.したがって、同号の許否事由に該当する。

(3) よって、Xの請求は認められない。

2. XのYに対する株式名簿の閲覧請求は認められるか。

(1) 株主または債権者は理由を明らかにすれば株式名簿の閲覧請求をなしうるところ(単独株主権、125条1項・2項)、Xは株主として委任状勧誘を行うことを理由として上記閲覧請求をなしうる。

(2) これに対し、Yは、XがYの「業務の遂行を妨げ、又は株主の共同の利益を害する目的で請求を行った」(125条3項3号)ことを拒否事由として主張することが考えられる。

しかし、株主名簿閲覧謄写請求をした株主が、株式会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営む者であるときにも、当該株主が、その権利の確保または行使に関する調査の目的で請求を行ったことを証明すれば、株式会社は本条2項の請求を拒むことができない(東京高決平20・6・12金融商事1295-12)と解すべきである。

Xは、自己の株主としての権利を行使することを目的としたものであり、Yは、Xの請求を拒みえない。

(3) よって、Xの請求は認められる。

 

Law Practice 商法〔第2版〕

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