読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Law Practise 商法 No.42:取締役の第三者に対する責任

Law Practise 商法

第1.X1の請求

1. X1は、Y1・Y2に対し429条1項に基づく損害賠償請求を提起しているところ、かかる訴えは認められるか。

429条1項の責任が認められるためには、①役員等が②その職務を行うについて悪意又は重大な過失③第三者に損害発生④②③間の因果関係が存することが必要である。

2. Y1の責任について検討する。

(1) まず、Y1はAの代表取締役であり、①「役員等」(423条1項参照)に当たる。

(2) 次に、②の要件について、悪意・重過失の対象が429条の責任の性格との関連で問題となる。

429条は株式会社が経済社会において重要な地位を占めており、しかも株式会社の活動はその機関である取締役の職務執行に依存することを考慮した特則であり、取締役の任務懈怠により第三者が損害を受けた場合に第三者の保護を厚くするために法定された責任であると解され(最大判昭44・11・26民集23-11-2150)、このことから、悪意・重過失は任務懈怠(善管注意義務違反・忠実義務違反)についてあれば足りる(法定責任説)。

   本件において、Y1は、採算割れの安価な受注を拡大させた結果、Aの赤字を拡大させ、業務を停止させる状況に至らせたのであり、これについてY1の任務懈怠が認められる。また、Y1は住宅需要が減少することを認識しつつ、建築資材の高騰に対応するため顧客からの前受金を受領していたのであるから、上記任務懈怠について悪意・重過失も認められる。

   したがって、②の要件を充足する。

(3) そして、③の要件について、「損害」の意義について、上記法定責任説から直接損害のみならず、間接損害も包含しうると解されるところ、Y1の任務懈怠の結果、Aには操業停止という重大な損害が発生している。これにより、X1は、発注した住宅の樋渡を受けられないばかりか、Aが受領した前受け金の返還も受けられないという損害を受けている(間接損害)。

   したがって、③および④の要件も充足する。

(4) よって、X1の請求は認容される。

3. 次に、Y2の責任について検討する。

(1)  Y2はAの取締役であることから、「役員等」に当たる。

(2) 次に、②の要件について、取締役は取締役会の構成員として取締役の監視義務を負うところ(362条2項2号)、Y2がこの義務を怠っており、取締役会への非上程事項であっても、取締役会を構成する取締役は、会社に対し、代表取締役が行う業務執行一般につき、これを監視し、必要があれば、取締役会を自ら招集し、あるいは招集することを求め、取締役会を通じてその業務執行が適正に行われるようにする職責があり(最判昭48・5・22民集27-5-655)、忠実義務違反が認められる。

   また、Y2は、財務部門担当者であり、Y1の指揮下でAが無理な受注していることを知っていたのであり、任務懈怠についての悪意・重過失も認められる。

(3) そして、③④についてはY1の場合同様肯定される。

(4) よって、X1の請求は認容される。

第2.X2の請求

1. では、X2のY1・Y2に対する429条1項に基づく損害賠償請求は認められるか。

2. Y1の責任について検討する。

(1) まず、①および②の要件については上記と同様である。

(2)③の要件について、X2は、Aに建築資材を販売していた業者であり、売掛金債権を有しており、Y1の任務懈怠によるAの経営悪化により債権回収ができなくなったという損害を受けている(直接損害)。

   したがって、③および④の要件も充足する。

(3) よって、X2の請求は認容される。

3. 次に、Y2の責任について検討する。

(1) まず、①および②の要件については上記と同様である。

(2)③の要件について、X2は、Y2の任務懈怠によるAの経営悪化により債権回収ができなくなったという損害を受けている(直接損害)。

   したがって、③および④の要件も充足する。

(3) よって、X2の請求は認容される。

 

Law Practice 商法〔第2版〕

Law Practice 商法〔第2版〕