Law Practise 民法Ⅰ No.57:不動産譲渡担保②

第1.設問(1)

1.C→Aの請求

(1)Stg:所有権に基づく返還請求権としての明渡請求権

(2)Kg:①C所有(A元所有 + A→B + B→C)②A占有

2.Aの反論:受戻権(①被担保債権の発生原因 ②譲渡担保契約 ③①の弁済) ⇒Cの再反論:受戻権の消滅

(1)弁済期経過後:譲渡担保権者処分権取得

➡弁済期経過後でも目的物の換価処分が完結するまでは譲渡担保権設定者は被担保債権を弁済して担保目的物の所有権を回復可(受戻権)

(2)譲渡担保権の実行方法

❶帰属清算方式:適正な価格で譲渡担保権者に帰属 →設定者に清算金の支払

❷処分清算方式:第三者に処分

➡受戻権の消滅時期(最判昭62・2・12民集41-1-67):①帰属清算型の譲渡担保においては、債権者が債務者に対して清算金の支払いもしくは提供、または目的不動産の適正評価額が債務額を上まわらない旨の通知により、②処分清算型か帰属清算型かを問わず、目的物の第三者への処分によって受戻権は消滅する

∵弁済期に弁済しない債務者のためにいつまでも権利関係が確定しない状態が続くのは望ましくない

(3)B→Cの譲渡(第三者への譲渡) →受戻権は消滅 →行使不可

3.Aの反論:Cが背信的悪意者であること

➡譲渡担保権者が被担保債権の弁済期後に目的不動産を譲渡した場合には、たとえその譲受人がいわゆる背信的悪意者に当たるときであっても、譲渡担保を設定した債務者は目的不動産を受け戻すことはできない(最判平6・2・22民集48-2-414)

4.結論:C→A請求可

第2.設問(2)

1.A→D:第三者異議の訴え(民執38Ⅰ)…Kg:「強制執行の目的物について所有権」

2.Dの反論:弁済期経過(譲渡担保権者に処分権帰属)

(1)弁済期経過 →譲渡担保権者に処分権帰属

➡譲渡担保権者の債権者による差押えは譲渡担保権者による処分と同視

(2)不動産を目的とする譲渡担保において、被担保債権の弁済期後に譲渡担保権者の債権者が目的不動産を差し押さえ、その旨の登記がなされたときは、設定者は、差押登記後に債務の全額を弁済しても、第三者異議の訴えにより強制執行の不許を求めることはできない(最判平18・10・20民集60-8-3098)

3.Aは第三者異議の訴え提起不可

 

Law Practice 民法I 総則・物権編〔第2版〕

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