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Law Practise 商法 No.40:法令違反と取締役の責任

1. Xは、Y1‐Y3に対し、Y1らの法令違反の結果、Aに損害を与えたことが任務懈怠(423条1項)に当たるとして、株主代表訴訟(847条1項)により損害賠償責任を追求しているところ、かかる請求は認められるか。

2. 取締役は、善管注意義務(330条、民法660条)および忠実義務(355条)を負うところ、「任務を怠った」(423条1項)とは、これらの義務に反した場合を指すと解される。

  そして、355条は「法令」の遵守義務を定めるところ、「法令」には、会社法330条(民法644条)、会社法355条の規定およびこれを具体化する形で取締役がその職務遂行に際して遵守すべき義務を個別的に定める規定が含まれることは明らかであるが、さらに、商法その他の法令中の会社を名宛人とし、会社がその業務を行うに際して遵守すべきすべての規定もこれに含まれ、取締役が会社をして会社がその業務を行うに際して遵守すべき規定に違反させることとなる行為をしたときは、右行為が取締役の受任者としての義務を一般的に定める規定に違反することになるか否かを問うまでもなく、355条にいう法令に違反する行為をしたときに該当する(最判平12・7・7民集54-6-1767)。

3. 本件において、AはBが製造した焼売を国内で販売していたところ、Y1らはこの焼売に食品衛生法が禁止する添加物Tが使用されていることをCから報告されいたにもかかわらず、販売中止の影響をおそれるあまり、販売の中止や在庫の破棄などの措置を取ることなく、そればかりかCに5000万円のいわゆる口止め料を支払っている。

  添加物Tは、世界数十か国で使用され、健康への影響も少ないとはいえ、日本国内では使用が禁止されている違法な添加物であり、明らかな法令違反が存する。

使用の事実が公表されたことで、Aに損害が生じている。

  もっとも、損害額として信頼回復費用(20億円)が計上されているが、損害額は上記違反行為と相当な因果関係を有する限度に限られ、法令違反はいずれ発覚するものであったことを考慮すればY1らが善管注意義務を尽しても発生した損害と考えられ、その全額を損害とみることはできない。

したがって、Y1らは全損害額93億5020万円から20億円の限度で控除された額について損害賠償義務を負う。

4. よって、Xの請求は認められる。

 

Law Practice 商法〔第2版〕

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