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Law Practise 商法 No.39:内部統制構築義務  

1. Xは、Yに対し、内部統制構築義務違反の結果、Aに損害を与えたことが任務懈怠(423条1項)に当たるとして、株主代表訴訟(847条1項)により損害賠償責任を追求しているところ、かかる請求は認められるか。

2. 取締役は、善管注意義務(330条、民法660条)および忠実義務(355条)を負うところ、「任務を怠った」(423条1項)とは、これらの義務に反した場合を指すと解される。

  会社法は、「取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制」の整備を取締役および取締役会の職務とし(348条3項4号、362条4項6号)、さらにこれらは大会社では義務としており(348条4項、362条5項)、取締役は、取締役会の構成員として、また、代表取締役または業務担当取締役として、リスク管理体制(内部統制システム)を構築すべき義務を負い、さらに、代表取締役および業務担当取締役がリスク管理体制を構築すべき義務を履行しているか否かを監視する義務を負うのであり、これもまた、取締役としての善管注意義務および忠実義務の内容をなすものというべきである(大阪地判平12・9・20判時1721-3)。

3. 本件において、Aは、営業部の所属する事業部門と財務部門を分離し、売上げについては、事業部内の営業部とは別の部署における注文書、検収書の確認等を経て財務部に報告される体制を整えるとともに、監査法人及び当該会社の財務部がそれぞれ定期的に取引先から売掛金残高確認書の返送を受ける方法で売掛金残高を確認することとするなど、通常想定される架空売上げの計上等の不正行為を防止し得る程度の管理体制は整えていた。

上記架空売上げの計上に係る不正行為は、事業部の部長が部下である営業担当者数名と共謀して、取引先の偽造印を用いて注文書等を偽造し、これらを確認する担当者を欺いて財務部に架空の売上報告をさせた上,上記営業担当者らが言葉巧みに取引先の担当者を欺いて、監査法人等が取引先あてに郵送した売掛金残高確認書の用紙を未開封のまま回収し、これを偽造して監査法人等に送付するという通常容易に想定し難い方法によるものであった。

さらに、財務部が売掛金債権の回収遅延につき上記事業部の部長らから受けていた説明は合理的なもので、監査法人も当該会社の財務諸表につき適正意見を表明していた。

財務部におけるリスク管理体制が機能していなかったというこ

とはできない。

したがって、Yに本件不正行為を防止するためのリスク管理体制を構築すべき義務に違反した過失があるということはできない。

4. 以上から、Xの請求は棄却される。

 

Law Practice 商法〔第2版〕

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