Law Practise 商法 No.37:代表取締役の解職

1. Xは、Yに対し、①本件取締役会招集通知に会議の目的が記載されていなかったこと、および②本件決議が不成立であることを理由に代表取締役の地位確認請求をすることになるところ、かかる請求は認容されるか。

  以下、それぞれの理由について検討する。

2. 理由①について

(1) 理由①は、Y社定款には招集通知に会議の目的を記載すべき旨定められていたにもかかわらず、代表取締役解任の件が記載されていなかったことことが、決議無効理由に当たるとの主張である。

(2) しかし、本件定款規定の趣旨は、代表取締役(招集権者)が抜き打ち的議題提起により自己に有利な取締役会運営をすることの防止することにあると考えられ、代表取締役の解職という目的を記載しないことは、この趣旨に反しないと解せられる。

また、株主総会と異なり、取締役会は会社の業務に通常関与している取締役で構成され、参加予定者に準備の機会を与える必要がないこよから、取締役会の招集には議題の通知は要求されてない(368条、299条5項、298条1項3号参照)。

(3) したがって、本件招集通知は適法である。

3.理由②について

(1) 取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数の出席し、その過半数の賛成で成立するとされ(369条1項)、「特別の利害関係を有する取締役」は評決に参加できないとされる(同2項)。

理由②は、Xは代表取締役の解任をされたとしても取締役を解任されるわけではないから、代表取締役解任決議について「特別の利害関係」を有するとはいえない。したがって、解任決議は、取締役4名の賛成によって成立すべきであるが、本件決議はB・D・Gの3名のみで成立しており違法であることをその内容とする。

(2) ここで、代表取締役解任決議が「特別の利害関係」に該当するかが問題となるところ、代表取締役は、会社の業務を執行・主宰し、かつ会社を代表する権限を有するものであって、会社の経営、支配に大きな権限と影響力を有し、したがつて、本人の意志に反してこれを代表取締役の地位から排除することの当否が論ぜられる場合においては、当該代表取締役に対し、一切の私心を去って、会社に対して負担する忠実義務に従い公正に議決権を行使することは必ずしも期待しがたく、かえって、自己個人の利益を図って行動することすらあり得るから、忠実義務違反を予防し、取締役会の決議の公正を担保するため、個人として重大な利害関係を有する者として、当該取締役の議決権の行使を禁止するのが相当である(最判昭44・3・28民集23-3-645)。

したがって、Xは特別利害関係人に該当し、7名の取締役中、病欠のC及び「特別の利害関係を有する取締役」であるXを除く、5名が「議決に加わることができる取締役」(361条1項)であり、その過半数である3名の賛成で決議は有効に成立する。

(3) よって、本件決議は有効である。

4. 以上から、Xの請求は棄却される。

 

Law Practice 商法〔第2版〕

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