Law Practise 民事訴訟法 発展問題11:違法収集証拠

1. XのYに対する損害賠償請求訴訟において、Xが提出した送受信記録(以下、本件記録)を裁判所は証拠として採用しうるか。本件記録が違法な手段により得られた証拠方法(違法収集証拠)であることから、その証拠能力の有無が問題となる。

2.自由心証主義(247条)のもとでは、真実発見の要請から、証拠方法に制限がなく、いかなる証拠方法にも証拠能力が認められるのが原則である。しかし、相手方当事者の地位に対する不当な侵害を認めるべきではないし、訴訟手続の公正さへの信頼確保や人格権侵害の誘発防止をも考慮する必要がある。

そこで、当事者の提出する証拠には、原則として証拠能力が認められるが、著しい反社会的手段を用いて人格権侵害を伴うような方法で収集・使用された証拠については、違法収集証拠として訴訟上の信義則(2条)によって証拠能力が認められないものと解すべきである(東京高判昭52・7・15判時867-60)。

3. 本件において、本件記録は電子メールの送受信記録であり、プライバシー権憲法13参照)等の人格権により保護されるべきところ、Xは本件記録をYに無断で閲覧し、これを阻止しようとしたYを殴打して、これを保存したものである。

このことから、本件記録は、暴力という著しい反社会的手段を用いて人格権侵害を伴うような方法で収集・使用された証拠といえる。

4. よって、裁判所は本件記録を証拠採用しえない。

 

Law Practice 民事訴訟法〔第2版〕

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