Law Practise 民事訴訟法 基本問題24:証明責任の分配

1. XのYに対する建物収去土地明渡訴訟において、Yの主張が認められるためには、XY間の信頼関係が破壊されてないことが証明される必要がある。

2. そこで、信頼関係破壊の証明責任は誰が負担するかが問題となる。

(1) 証明責任とは、ある事実が真偽不明の時にその事実を要件とする法律効果の発生叉は不発生が認められなくなる一方当事者の危険又は不利益をいい、ある事実の真偽が不明の場合、裁判拒否をすることは当事者の裁判を受ける権利(憲法32)を奪うことになることから、裁判拒否を防止し、紛争解決を図るために必要とされるものである。

(2) 証明責任の分配基準が問題となるところ、実体法規自体が当事者の公平を考慮して規定されており、基準として明確であることから、実体法の構成要件の定め方及び法適用の論理的関係に基づき、自已に有利な法律効果の発生を主張するものが証明責任を負う。

具体的には、①権利根拠規定の要件事実についてはその法律効果の発生を主張する者、②権利障害規定の要件事実についてはその法律効果の発生を争う者、③権利滅却規定の要件事実については、その法律効果の消滅を主張する者が証明責任を負担する。

(3) 賃貸借契約において、背信性の不存在により賃貸借契約が終了しない場合はあくまで例外的であり、かかる事由の不存在により利益を受けるのはあくまで賃借人であることから、信頼関係破壊の事実は権利障害事実にあたり、信頼関係破壊の不存在につき、賃借人が証明責任を負う。

3. 本件において、当該事実の証明責任を負うのはYであり、Xがこの点について主張・立証していないとするYの主張は失当である。

4. よって、Yの主張は認められない。

 

Law Practice 民事訴訟法〔第2版〕

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