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Law Practise 民事訴訟法 発展問題9:損害額の立証

Law Practise 民事訴訟法

1. XのY1・Y2に対する不法行為に基づく損害賠償請求訴訟において、Xのこうむった損害額が争点となっている。ここで、損害額は違反行為によって形成された価格(現実価格)と違反行為がなければ形成されていた価格(想定価格)との差額であるが、損害額は要証事実であり、証明の対象となるところ、現実に存在していない価格の立証と認定が問題となる。

2. 証明とは、裁判官が要証事実の存在につき確信を抱いた状態を指すところ、裁判所は当事者に争いのない事実はそのまま認定しなければならず(弁論主義の第2テーゼ)、当事者に争いのある場合は証拠調べによって事実認定しなければならない。

そして、事実認定は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により、事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断すべきとされ(自由心証主義・247条)、当該価格協定がなければ現実の小売価格よりも安い小売価格(想定価格)が形成されていたことは、Xが主張・立証すべきであるから(最判平1・12・8民集43-11-1259)、Xの立証が、裁判官が事実を認定することのできる心証の程度(証明度)に達しない場合には、請求が棄却されることになる。

3. しかし、現実に存在しない想定価格の立証は困難であり、当事者の公平を害することもありうる。

  そこで、自由心証主義下における損害額の証明度を軽減した248条の適用の可否が問題となる。

248条が適用されるにためには、①「損害が生じたことが認められる場合」において、②「損害の性質上その額を立証することが極めて困難である」ことが必要である。

本件では、現実に存在しない想定価格の立証が損害額の立証に必要であり、②の該当性について容易に認めうる。

もっとも、損害額の立証と損害発生の立証は現実には重なりうることから、①の該当性について問題となりうるところ、いわゆる差額説を前提として、248条の適用対象を損害額について限定しているのは何らかの損害発生の立証で足りるとする趣旨であると解される。本件価格協定により、灯油価格が上昇したとの立証がなされれば、損害発生が認められ、①の要件を充たす。

4. よって、上記の場合、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、Xの主張する損害額を「相当な損害額」(248条)と認定することができる。

 

Law Practice 民事訴訟法〔第2版〕

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