Law Practise 商法 No.29:株主総会取消訴訟の訴えの利益

第1.〈文1〉について

1.設問(1)

(1) Xは、Yに対し、以下の理由に基づき、株主総会決議取消しの訴え(831条1項)を提起すべきである。

(2)取消事由

ア.Yは取締役会設置会社であり、株主総会の召集は取締役会により決定されるところ(298条4項・1項)、Y社では代表取締役Aのみで決定されており、このことが招集手続きの法令違反(831条1項1号)にあたる。

イ.また、Yは非公開会社であり、招集通知1週間前までに通知を発することを要するところ(299条1項)、Yは5日前に通知を発している。かかる招集期間不足が召集手続きの法令違反(831条1項1号)にあたる。

2.設問(2)

上記のような本件決議には決議方法の法令違反が存するところ、裁量棄却(831条2項)の有無が認められるか。

ここで、裁量棄却が認められるためには、①招集の手続・決議の方法が法令・定款に違反のばあいであり、②違反する事実が重大でなく、かつ、決議に影響をことが必要となる。

  本件は、招集手続きの法令違反であるが(①)、上記法令違反は株主たるXの議決権行使の機会を奪う重大な違反であるばかりか、Xの持株数は400株(発行済株式総数2000株)であり、違反の有無は十分に議決に影響を及ぼしうるものである(②)。

  したがって、裁量棄却は認められない。

第2.〈文2〉について

1. 上記訴え係属中に開催された株主総会でA・B・Cが取締役に再任された場合、Xの訴えは、その訴えの利益を喪失しないか。

2. 役員選任の株主総会決議取消しの訴えの係属中、その決議に基づいて選任された役員がすべて任期満了により退任し、その後の株主総会の決議によって役員が新たに選任されたときは、特別の事情のない限り、右決議取消しの訴えは訴えの利益を欠くに至る(最判昭45・4・2民集24-4-223)解すべきである。

3. よって、Xの訴えは、訴えの利益喪失し、訴訟要件欠くに至り、訴えは却下される。

 

Law Practice 商法〔第2版〕

Law Practice 商法〔第2版〕