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Law Practise 民事訴訟法 基本問題23:訴訟上の証明

Law Practise 民事訴訟法

1. 本件において、A大学病院が行ったルンバール施術(以下、本件施術)と脳出血との因果関係が争点となっているところ、Xの主張通りの因果関係の認定をなしうるか。因果関係の存在は要証事実であり、証明の対象となることから、Xが本件施術とXの障害との因果関係を証明できたといえるかが問題となる。

2. 証明とは、裁判官が要証事実の存在につき確信を抱いた状態を指すところ、裁判所は当事者に争いのない事実はそのまま認定しなければならず(弁論主義の第2テーゼ)、当事者に争いのある場合は証拠調べによって事実認定しなければならない。

そして、事実認定は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により、事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断すべきとされるが(自由心証主義・247条)、裁判官が事実を認定することのできる心証の程度(証明度)については解釈に委ねられる。

本件では、因果関係の立証に必要な証明度が問題となるが、裁判で行われるのは法的評価であって、科学的評価ではない。

したがって、訴訟上の因果関係の立証に要求される証明度は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、❶経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することであり、その判定は、❷通常人が疑いをさしはさまない程度に真実性の確信をもちうるものであることを必要とし、かつそれで足りる歴史的証明最判昭50・10・24民集29-9-1417)ものと解する。

3. 本件において、自然科学的な見地からは、化膿性髄膜炎の再燃の可能性が否定できないとしても、Yの主張通りの可能性であることも否定できない。しかし、裁判所は、嘔吐、けいれん等の発作がルンバール施術後15分後に発生したこと、施術の実施がXの食事直後に行われ、Xが嫌がり泣き叫ぶなどしたため施術に通常以上の時間を要し、Xには出血の傾向があったことから、このような状況で脳出血を惹起した可能性があり、発作後は脳出血の治療をしていたこと、化膿性髄膜炎の再燃の可能性が通常は低く、再燃する特別の事情が認められないとの認定を行っている。これらの事実を前提とすれば、ルンバール施術とXの障害との間に通常人が疑いをさしはさまない程度の因果関係が認められる。

4. よって、裁判所は、上記因果関係を肯定することができる。

 

Law Practice 民事訴訟法〔第2版〕

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