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Law Practise 商法 No.24:議決権行使の代理人資格の制限

1. Yは、その定款に議決権行使の代理人資格を株主に限定する規定を有するところ、Yの株主であるAがその娘Bに代理権を授与して議決権を行使させたことが「決議の方法が…定款に違反」(831条1項1号)に当たるとして、Xは、Yに対し本件株主総会決議取消しの訴え(831条1項)を提起しうる。

2. これに対し、Yからは、以下の反論が考えられる。これらの当否について検討する。

(1)  Yは、本件定款規定が株主の代理人による議決権行使を認めた310条1項に反し、無効であるとの反論が考えられる。

しかし、定款は会社の自治規範として、株主総会で定められる ものであるから、合理的理由に基づく相当程度の制限であれば、定款の規定により代理人資格を定款で株主に限ることも許される と考えるべきである(最判昭43・11・1民集22-12-2402)。

したがって、本件定款規定は合理的理由による相当程度の制限であって、有効である(最判昭43・11・1民集22-12-2402)。

(2) 次に、Aによる議決権の代理行使は、株主総会を撹乱するおそれなく、株主の議決権行使の機会を奪うものであるから、本件定款規定に反しないとの反論が考えられる。

本件定款規定が議決権行使の代理人資格を株主に限定しているのは、株主総会が株主以外の第三者によって攪乱されることを防止し会社の利益を保護する趣旨に出たものであり、第三者による攪乱のおそれがない場合には株主以外の代理権行使は本件定款規定に反しない。

   本件において、Aが代理人としたBは、大学生であると同時にAの娘であり、Bが株主総会を攪乱することは考えにくい。また、このような代理行使を認めないとAの議決権行使の機会を不当に奪うことにもなる。

   したがって、Aによる議決権の代理行使は、本件定款規定に反しない。

3.[取消しうべき場合]以上から、本件株主総会決議は取り消しうるが、裁量棄却(831条2項)の可否が問題となる。

(1) 裁量棄却がなされるためには、①招集の手続・決議の方法が法令・定款に違反し、②違反する事実が重大でなく、かつ、決議に影響を及ぼさない場合であることが必要である。

(2) 本件総会の瑕疵は、決議の方法の定款違反である(①)。また、YはBがAの娘であることを確認ししており、その際に不審な事由は見受けられておらず、重大な違反事実があるとはいえないばかりか、Aの株式は1株にすぎず、本件総会決議は圧倒的多数で可決されていることから、決議に影響を及ぼしたとはいえない(②)。

(3) よって、裁量棄却を認めうる。

 

   

【補足判例

a.法人等が職員を議決権行使の代理人とした場合:定款で議決権行使の代理人の資格を株主に限定している場合においても、右規定は株主総会が株主以外の第三者によって攪乱されることを防止し会社の利益を保護する趣旨に出たものであり、株主である県、市、株式会社がその職員または従業員に議決権を代理行使させることは、右定款規定に反しない。(最判昭51・12・24民集30-11-1076)

b.弁護士を議決権行使の代理人とする場合

(a)定款で議決権行使の代理人資格を株主に限定している場合に、弁護士による代理行使の申出を拒絶することは、総会がその者の出席によって攪乱されるおそれがあるなどの特段の事情のない限り、合理的な理由による相当程度の制限ということはできず、定款規定の解釈運用を誤ったものというべきである。(神戸地尼崎支判平12・3・28判タ1028-288)

(b)定款で議決権行使の代理人資格を株主に限定している場合に、総会をかく乱するおそれのない職種の者であれば非株主であっても入場を許すという実質基準を持ち込むことは弊害が多いから、非株主である弁護士の代理行使を拒否したことに違法はない。(宮崎地判平14・4・25金融商事1159-43)

 

Law Practice 商法〔第2版〕

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