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Law Practise 商法 No.23:全員出席総会

第1.設問(1)

1.訴えの選択(設問前段)

(1) Xとしては、本件決議には招集手続きに関する重大な法令違反があることを理由に株主総会決議不存在確認の訴え(830条1項)を提起することが考えられる。

(2) そこで、本件決議に決議不存在事由が存在するかについて、以下検討する。

ア.ここで、「決議が存在しない」とは、決議が外形的に存在しない場合(事実上の不存在)のみならず、法律的に株主総会の決議として評価されるものが存在しない場合(法律上の不存在)も意味する

イ.取締役会設置会社において、株主総会は取締役会が総会の日時・場所・目的である事項等を定めるとされ(298条1項)、代表取締役が招集するのが原則である(296条3項)。

本件総会招集の決定は取締役ABCで構成される取締役会によりなされており、召集はAによりなされている。しかし、Y社においてXが代表取締役を辞任した事実もなければ、Cの取締役就任やAの代表取締役就任の事実も存在しない。このことから、本件総会は取締役会の決議なしに招集権限のない者により招集されたものであって、法律上の意義における株主総会ということはできず、そこで決議がなされたとしても、株主総会の決議があったものとはいえない(最判昭45・8・20判時607-79)。

ウ.したがって、本件総会は法律上不存在であったといえ、本決議も法律上不存在であるというべきである。

(3) よって、Xは、株主総会決議不存在確認の訴え(830条1項)を提起すべきである。

2.訴えの帰趨(設問後段)

(1) Xによる前記訴えに対し、Y社は、召集手続きに瑕疵があるとしても、株主全員の同意がある以上、その瑕疵は治癒されているとの反論が考えられる。

(2) この点、株主総会を招集するためには招集権者による招集の手続を経ることが必要であるとしている趣旨は、全株主に対し、出席の機会を与えるとともにその議事及び議決に参加するための準備の機会を与えることを目的とするものである。

このことから、招集権者による株主総会の招集の手続を欠く場合であっても、①株主全員がその開催に同意して出席したいわゆる全員出席総会において、株主総会の権限に属する事項につき決議をしたときには、右決議は有効に成立するものというべきであり、また、②代理人が出席することにより株主全員が出席したこととなる右総会において決議がされたときには、右株主が会議の目的たる事項を了知して委任状を作成したものであり、かつ、当該決議が右会議の目的たる事項の範囲内のものである限り、右決議は有効に成立するものと解すべきである(最判昭60・12・20民集39-8-1869)。

(3) 本件においても、株主全員が出席に同意しており、会議の目的を理解したうえで委任状を作成し、代理人が参加しており、決議は有効に成立しているというべきである。。

(4) よって、Xの提起した株主総会決議不存在確認の訴えは棄却される。

第2.設問(2)

1. では、地位確認の訴えの帰趨はどうなるか。これについての訴えの利益が前記株主総会決議不存在の訴えの帰趨に影響を与えないかが問題となる。

2. 前記のとおり、取締役選任決議が不存在である当該取締役によって構成される取締役会は正当な取締役会とはいえず、このような取締役会において選任された代表取締役が取締役会決議に基づき招集した株主総会における取締役選任決議は、全員出席総会等の特段の事情のない限り、法律上存在しない最判平2・4・17民集44-3-526)と解すべきである。

3. 本件において、前記株主総会決議不存在の訴えが認容された場合、本件決議は有効であり、Xの訴えの利益は失われる。

4. これに対して、株主総会決議不存在の訴えが認容されない場合、本件決議は存在しないことになり、Xの訴えの利益は失われず、決議が不存在である以上、Xの地位の確認判決がなされることになる。

 

Law Practice 商法〔第2版〕

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