Law Practise 民法ⅠNo.32:取得時効と登記①

1.A→Dの請求(本訴)

(1)Stg:土地所有権確認請求 + 所有権移転登記請求

(2)Kg:①1989.1.27占有 ②20年経過 ③時効の援用

2.Dの反論:「他人の物」(162Ⅰ)→自己の物に取得時効不成立

➡時効制度の趣旨:永続する事実状態の尊重 →社会生活の安定を図る

➡たとえ自己の所有物であっても一定期間占有を継続すれば時効取得を主張しうる

3.Dの反論:Aの未登記

(1)第三者との関係では公示の要請が働くとしても、時効完成前は時効取得者は登記をしたくてもできないのでありこの時点で登場した第三者はあたかも当事者関係に立つ

(2)基準

①時効完成前の第三者:不動産の取得時効完成前に原所有者から所有権を取得し、移転登記を経由した者に対し、その後の時効取得者は登記なくして所有権の取得を対抗できる(最判昭41・11・22民集20-9-1901)

cf.不動産の時効取得者は、時効完成前、その所有権を取得し、時効完成後に移転登記を経由した者に対して登記なくして所有権を対抗しうる(最判昭42・7・21民集21-6-1653)

②時効完成後の第三者:取得時効による不動産所有権の取得も、登記なしには、時効完成後当該不動産につき旧所有者から所有権を取得し登記を経た第三者に対して、その善意悪意を問わず、対抗できない(最判昭33・8・28民集12-12-1936)

cf.甲が時効取得した不動産について、その取得時効完成後に乙が当該不動産の譲渡を受けて所有権移転登記を了した場合において、乙が、当該不動産の譲渡を受けた時に、甲が多年にわたり当該不動産を占有している事実を認識しており、甲の登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情が存在するときは、乙は背信的悪意者に当たる(最判平18・1・17民集60-1-27)

(3)Dは時効完成前の第三者 →登記なくして対抗可

4.Dの反論:Aは善意 →時効期間10年 ⇒Dは時効完成後の第三者(対抗不可)

(1)善意・無過失(162Ⅱ):自己の所有に属することについての善意・無過失

➡A=善意 →時効期間10年間

(2)時効の起算点移動の可否:取得時効の基礎たる事実が法定の時効期間以上に継続した場合でも、時効完成の時期は、必ず時効の基礎たる事実の開始した時を起算として決定すべきものであって、時効援用者において起算点を選択することはできない(最判昭35・7・27民集14-10-1871)

➡1999.1.27:Aの取得時効完成

(3)再度の時効期間経過:不動産の取得時効が完成したものの登記を経ることなく経過するうちに第三者が所有権移転登記を経由したという場合、占有者は、さらに右登記の日より時効取得に必要な期間占有を継続したときには、登記を経由しなくてもその第三者に対抗することができる(最判昭36・7・20民集15-7-1903)

➡2008.12.20:Dの登記(時効期間未経過)→A取得時効不成立?

(4)背信的悪意者:Aが時効取得した不動産について、その取得時効完成後にDが当該不動産の譲渡を受けて所有権移転登記を了した場合において、Dが、当該不動産の譲渡を受けた時に、Aが多年にわたり当該不動産を占有している事実を認識しており、Aの登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情が存在するときは、Dは背信的悪意者に当たる(最判平18・1・17民集60-1-27)

➡Dの主観的要件:Aが取得時効の成立要件を充足していることをすべて具体的に認識している必要はないが、少なくとも、Aによる多年にわたる占有の事実を認識している必要がある(最判平18・1・17民集60-1-27)

5.Dが背信的悪意者 →Aは請求可

 

Law Practice 民法I 総則・物権編〔第2版〕

Law Practice 民法I 総則・物権編〔第2版〕

  • 作者: 千葉恵美子,潮見佳男,片山直也
  • 出版社/メーカー: 商事法務
  • 発売日: 2014/03/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログを見る