Law Practise 民事訴訟法 発展問題8:弁論主義(2)

1. XのYに対する消費貸借契約に基づく貸金支払請求訴訟において、裁判所が当事者の主張していない事実(公序良俗違反)を認定することは弁論主義違反とならないか。

2. ここで、弁論主義とは裁判の基礎となる事実の確定に必要な資料(訴訟資料)の収集・提出を当事者の権能かつ責任とする建前であり、私的自治の訴訟上の発現形態であって、民事訴訟の本質にその根拠を有し(本質説)、当事者の意思の尊重および不意打ち防止の機能を有する。

このことから、当事者の主張していない事実を裁判所は判決の基礎とすることはできないという弁論主義の第1テーゼが導かれる。

なお、弁論主義の第1テーゼの対象となる事実は、当事者の意思の尊重、不意打ち防止の見地から訴訟の勝敗に直結する事実たる主要事実を弁論主義の対象とすれば十分であり、原則として主要事実のみが弁論主義第1 テーゼの対象となる

もっとも、般条項などの不特定概念の場合、その内容をなす具体的事実が審理の中心であり、不特定概念の場合には、当事者の意思を尊重すべく、その内容をなす具体的事実も主要事実として弁論主義の対象となる。

3. 本件において、公序良俗違反を基礎付ける具体的事実の主張があれば裁判所はその事実を認定することは許され、棄却判決をなしうる。

 

Law Practice 民事訴訟法〔第2版〕

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