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Law Practise 商法 No.17:新株の有利発行

1. XらのYに対する新株発行の差止請求(210条)は認められるか。

 新株発行の差止請求が認められるためには、①210条1号・2号事由の存在および②株主が不利益を受けるおそれが必要である。

2.①について

(1)法令又は定款に違反について(210条1号)

ア.第三者への有利発行には、株主総会の特別決議が必要であるところ(201条1項、199条3項、309条2項5号)、Y社は株主総会決議を経ていない

イ.そこで、「特に有利な金額」(199条3項)の意義が問題となるところ、有利発行規制の趣旨は有利発行により既存株主の有する株式の経済的価値が減少することを防止することにある。そこで、「有利」とは、公正な払込金額に比して著しく有利な金額をいい、公正な払込金額とは資金調達の目的を達せられる限度で,既存株主にとって最も有利な金額をいい、公正な払込金額かどうかは、一般の投資家との公正を図る必要があるから、市場価格を基礎にその価格の騰落習性、株式市場の動向などを磯酌して判断される。

買占めによる高騰の場合、株式が一般的に許容される限度を超える不当な目的をもった大量の買占めのため市場においてきわめて異常な程度にまで投機の対象とされ、その市場価格が企業の客観的価値よりはるかに高騰し、それが不当な買占めの影響を受ける期間の現象にとどまるような、きわめて例外的な場合においては、その新株発行価額決定直前の市場価格を新株の公正な発行価額の算定の基盤から排除することが許され(大阪地判平2・5・2金融商事849-9)、自主ルールを設定することには一定の合理性が認められる。

ウ.本件新株発行の払込価額はYの自主ルールに比して安く設定されており、「特に有利な金額」に該当し、Y社には株主総会決議を経ていない点に違法がある。

(2)【参考】著しく不公正な方法により行われる場合(210条2号)

ア.取締役会に新株発行の権限(201Ⅰ前段)の趣旨は、会社の資金調達の便宜にある。

イ.資金調達の必要が乏しいのに特定株主の持株比率を低下させる目的をもって特定の第三者に募集株式を発行する場合には、「著しく不公正な方法」にあたると解される。もっとも会社においては常に資金需要があるのであるから、常に資金調達の目的があるともいえる。

そこで、特定株主の持株比率を低下させる目的が主要な目的であるといえれば、「苦しく不公正な方法」にあたる。

もっとも、主要な目的の立証は困難だから、特定の株主の持株比率が著しく低下することを認識しつつ募集株式の発行が決議された場合には,これを正当化するだけの合理的理由のない限り,「著しく不公正な方法」にあたると判断すべき

ウ.本件において、770万株発行することで、Xらの既存株主の持株比率が低下する。

エ.したがって、「著しく不公正な方法」に該当する。

3. よって、Xによる差止請求は認められる。

 

Law Practice 商法〔第2版〕

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