Law Practise 商法 No.15:契約による株式の譲渡制限

1. 127違反の有無

(1) 株主は、その有する株式を自由に譲渡することができるのが原則である(株式讓渡自由の原則・127条)。

 Y社は従業員持ち株制度を採用し、本件合意により譲渡先とその価額を制限している(契約による株式譲渡制限)

かかる合意は、127条の脱法行為として無効とならないか。

(2) ここで、127条は、会社以外の第三者と株主との間において、株式譲渡を制限することを禁止するものではない。

したがって、会社以外の第三者と株主との合意は原則として有効であるが、第三者が会社から独立性を有しない場合には,実質的に会社と株主との合意といえ、127条の脱法行為として無効となる

しかし、会社と株主との合意は原則として127条の脱法行為として無効であるが、投下資本の回収を妨げない場合には株主の投下資本の回収の利益を確保することができる以上、これを無効とする必要はない

(3) 本件合意は、会社による買取人の指定であるが、株主が投下資本の回収の利益を確保しうる。

(4) よって、本件合意は無効とはいえない。

2.公序良俗民法90条)違反の有無

(1) であるとしても、本件合意は公序良俗違反とならないか。本件合意における①讓渡価格を取得価格とする点、②譲渡先の限定について検討する。

(2)①について

まず、本件合意は、従業員の意思の制約をしないか。

従業員持ち株制度の趣旨は、①福利厚生の一環として従業員の資産形成を図ること、②従業員の経営参加意識を高めること、③安定株主を形成すること等にある。

Xは、上記目的を達成するため、自由な意思で参加ており、意思が制約されているわけではない。

(3)②について

次に、投下資本の回収を制限するものか。

譲渡の都度、決定するのは困難であり、譲渡価格を制限することはやむを得ない事情もある。

(4) よって、本件合意に公序良俗違反はない。

3. 以上から、本件合意は適法である。

 

Law Practice 商法〔第2版〕

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