Law Practise 民事訴訟法 発展問題4:確認の利益(2)―敷金返還請求権

1. XのYに対する保証金返還請求権確認訴訟は適法か。訴えの利益の有無が問題となる。

2. 訴えの利益とは、本案判決をすることの必要性・実効性を個々の請求について審査するための訴訟要件であり、対象が無限定、判決に執行力がなく、紛争解決方法として迂遠であることから、その限定の必要性が生じる。

そして、確認の利益は、①確認の訴えによることが適切か(方法選択の適否)、②確認の訴えによる紛争処理にとり適切な対象であるか(対象選択の適否)、③即時に確認判決を得て法的地位を確定する必要があるか(即時確定の利益)があるかどうかを慎重に吟味して確認の利益の有無を検討すべきである。

3. 本件においては、敷金返還請求権確認の訴えを提起しているところ、敷金は将来発生する債権とも考えられ、②対象選択の適否がまず問題となる。

紛争の解決にとって現在の権利・法律関係の存否を問うのが有効適切である以上、原則として現在の権利・法律関係の存否が確認の対象となる。

しかし、将来の権利・法律関係であっても条件付き権利として現在の権利・法律関係に引き直すことが可能な場合に確認対象となしうる(確認訴訟の紛争予防的機能)。

本件の敷金返還請求権は、賃貸借終了後、明渡しがなされた時点において、それまでに生じた敷金の被 担保債権一切を控除しなお残額があることを条件として、その残額につき発生する条件付き権利であり、敷金返還請求権は条件付き権利として賃貸借契約終了前においても存在するものであるから、現在の権利・法律関係ということができる。

4. 次に、条件付き権利である敷金返還をめぐる紛争は、賃貸借契約の終了後、明渡しの時点までは、現実化せず、現時点における危険は抽象的なものにとどまるともいえ、③即時確定の利益があるかが問題となる。

即時確定の利益があるといえるためには、原告の有する権利・法律関係につき危険や不安が現存し、その除去のため確認判決を得ることが必要かつ適切であることが必要である。

本件では、Yは敷金の金額ではなく、Xの主張する敷金差入れの事実を争っており、Yが敷金の返還義務を負わないと主張しているものと考えられる。敷金返還請求権の存否を確定すれば、Xの法律上の地位に現に 生じている危険や不安は除去されるため、確認判決を得ることが必要かつ適切といえる。

したがって、本件訴訟においては、③即時確定の利益も認められる。

5. よって、本件訴訟は、確認の利益が認められ、適法である。

 

Law Practice 民事訴訟法〔第2版〕

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