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Law Practise 商法 No.10:株主平等の原則

第1.設問(1)

1. Xは、Yに対し、本件契約に基づく金員支払請求をなしうるか。本件契約は大株主であるXに対してのみ金員を支払うことを内容としているものであるから、株主平等原則(109条1項)に反し無効とならないかが問題となる。

2. 株主平等原則とは株式会社は株主をその有する株式の内容及び数に応じて、平等に取り扱わなければならないとする原則である。

その趣旨は、株式が均等な割合的単位の形をとる以上、権利も均等であるべきであるとするところにあり、株式会社における多数決の濫用,多数決により選任された取締役等の権限の濫用から少数株主を保護する機能を有する。

  これを具体化する規定として、議決権(308条1項本文)、剰余金配当請求権(454条3項)、残余財産分配請求権(504条3項)がある。

そして、株主平等原則は強行法規的性格を有し,これに反する会社の措置は無効となる。

3. 本件契約は、Xにのみ配当に代えて年間106万円もの金員を贈与することを内容としており、株主総会上程予定の現取締役の再任議案承認のためになされるものであり、多数決の濫用、多数決により選任された取締役等の権限の濫用から少数株主を保護するという株主平等原則の機能を害するものである。

したがって、本件契約は株主平等原則に違反し、無効である。

4. よって、Xの請求は認められない。

第2.設問(2)

1. Xは、Yに対し、本件契約に基づき商品券の引渡請求をなしうるか。本件株主優待制度が一定の大株主に高い乗率で高額な商品券を贈与することを内容としているものであるから、株主平等原則(109条1項)、利益供与禁止(120条)及び剰余金配当規制(451条)に反し無効とならないかが問題となる。

2.株主平等原則違反について

(1) 前述のとおり、株主平等原則は多数決の濫用、多数決により選任された取締役等の権限の濫用から少数株主を保護することをその趣旨とする。

そして、この趣旨を害しない合理的な理由があれば、一定の異なる取扱いも許容される場合がありうる。

株主優待制度は個人株主づくりや会社の宣伝などの目的を有し、さらに金額が少額であるなど相当な限度であれば、上記趣旨を害しない合理的理由が認められ、株主平等原則には反しないものと解される

(2) 本件株主優待制度は、すべての株主対象を対象とし、大株主に高い乗率で商品券を配布するものであり、その乗率は1000株を保有する株主と200万株を有する株主との間には2万倍の差があり、少数株主の保護という株主平等原則の趣旨に反しないとはいえない。

したがって、本件株主優待制度は株主平等原則に違反し、無効である。

(3) よって、Xの請求は認められない。

2.利益供与禁止違反について

(1) 会社法120条1項は、会社が「株主の権利の行使に関し、財産上の利益の供与」をすることを禁じる。

(2) Xは、他の株主に比して過大な利益を得ており、「特定の株主に対して無償で財産上の利益の供与」に該当し、「株主の権利の行使に関し、財産上の利益の供与」を得たものと推定される(120条2項)。

(3) したがって、本件契約は120条1項により無効となり、Xの請求は認められない。

3.剰余金配当規制

(1) 会社法は現物配当を認めていることから、これと株主優待制度との関係が問題となる。

(2) そこで、優待制度の趣旨・目的、優待の内容・方法・効果などを総合的に考慮して配当の性格を認められる場合には、現物配当として剰余金配当規制に服する。

本件株主優待制度は株主総会での議案承認を目的として、大株主Xに10万円という過大な優待をしていることから、現物配当の性格を有すると解される。

(3) よって、本件株主優待制度が分配可能額(461条2項)を超える場合には、剰余金配当規制に反し(違法配当)、本件株主優待制度は無効となり、Xの請求は認められない。

 

Law Practice 商法〔第2版〕

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