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Law Practise 民事訴訟法 基本問題9:確認の利益(1)―遺言無効確認の訴え

第1.設問前段

1. X1のYに対する遺言無効確認の訴えは適法か。①当事者適格および②訴えの利益の有無が問題となる。

2.原告適格の有無

(1) 本件では、X1のみが提訴しているが、かかる提訴は適法か。遺言無効確認の訴えは固有必要的共同訴訟にあたらないかが問題となる。

(2) では、いかなる場合に固有必要的共同訴訟にあたるか(固有必要的共同訴訟の選別基準)。

この点、基本的には実体法上単独で管理処分可能な場合は訴訟上も通常共同訴訟となるが、実体法上全員でのみ管理処分可能な場合は訴訟上も固有必要的共同訴訟となると解するのが妥当である。

(3) 本件のごとき遺言無効確認の訴えは、①遺言無効確認訴訟の実質は被告の権利の不存在の主張であり、②相続財産の共同所有は共有(民法249条)であることから、実体法上単独で管理処分可能といえ、固有必要的共同訴訟にあたらないと解すべきである。

(4) したがって、X1は単独で提訴しうる。

3.確認訴訟の訴えの利益(確認の利益)の有無

(1) 訴えの利益とは、本案判決をすることの必要性・実効性を個々の請求について審査するための訴訟要件であり、対象が無限定、判決に執行力がなく、紛争解決方法として迂遠であることから、その限定の必要性が生じる。

(2) そして、確認の利益は、①確認の訴えによることが適切か(方法選択の適否)、②確認の訴えによる紛争処理にとり適切な対象であるか(対象選択の適否)、③即時に確認判決を得て法的地位を確定する必要があるか(即時確定の利益)があるかどうかを慎重に吟味して確認の利益の有無を検討すべきである。

(3) 本件においては、遺言無効確認の訴えを提起しているところ、これは遺言という過去の法律行為を確認の対象とするものである。 そこで、②対象選択の適否が問題となる。

民事訴訟の対象である私的法律関係は時間の経過とともに 常に変動するのであり、過去の法律行為を 確定しても、現在の法律上の地位の不安を直接的に除去することにならないのが通常である。 そうだとすると、現在の権利・法律関係の存否を問うのが紛争の解決にとって有効適切であって、過去の法律行為を確認しても紛争解決の実効性がない。そこで、過去の法律行為を確認の対象としても、原則として、確認の利益は認められないと考える 。もっとも、過去の法律行為であっても、それを確定することが現在の紛争の直接かつ抜本的な解決のためにもっとも適切かつ必要と認められる場合には、例外的に確認の利溢を認めてよいと考える。

本件の遺言無効確認の訴えは、過去の法律行為の確認を求めるものである。しかし、当事者の現在の紛争の争点が遺言の有効性である以上、遺言無効確認の訴えは現在の紛争の直接かつ抜本的解決にもっとも適切かつ必要と認められ、確認の対象として適切であり、確認の利益が認められる。

4. よって、本件訴訟は適法であり、裁判所は本案判決をなしうる。

第2.設問後段

1. 裁判所が前記X1の請求を棄却し、これが確定した場合、X2の提訴は許されるか。既判力によって遮断されないかが問題となる。

2. 遺言無効確認の訴えの確認対象は相続財産に対する権利の全部または一部の不存在であり、相続人全員を当事者とする必要はなく、遺言無効確認の訴えは、固有必要的共同訴訟でない。

したがって、X1は単独提訴をなしうるから、X2は前訴の当事者ではない。

3. そして、既判力の相対効(115条1項5号)から、前訴の既判力は前訴当事者であるX1にのみ及び、X2には前訴の既判力及ばない。

4. よって、X2の提訴は既判力で遮断されず、提訴は許される。

 

Law Practice 民事訴訟法〔第2版〕

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