Law Practise 商法 No.6:払込みの仮装

第1.設問(1)

1.Y1による払込みの効力

(1) 預合とは、発起人が払込取扱銀行から金銭を借り入れ、これを設立中の会社の預金に振り替えて株式の払込みにあてるが、その借入金を返済するまではその預金を引き出さないことを約することであり、Y1の払込みは、預合いにあたる。

(2) 預合いのような払込みの仮装の抑止の趣旨は、資本充実の原則ひいては会社債権者の保護にあり、払込みを無効とすると会社は払込取扱機関に預金債権を有しないことになり、会社債権者を害することになる。また、52条の2第1項は払込みを仮装した出資に係る金銭の全額の支払または金銭以外の財産の全部の給付を行う義務(無過失責任)を負うこととするとともに、36条は出資を履行しない発起人の失権を定めていることから、払込みの仮装は有効であるという見解もある(有効説)。

 しかし、払込みの仮装は、銀行の帳簿上の操作にすぎず、会社にとって実質的には財産は確保されていないので、会社債権者及び他の引受人を保護する必要性がある。したがって、仮装払込として、払込みの効力は認められない(無効説)。

(4) よって、Y1の払込みは見せ金による払込みにあたり、払込みは無効である。

その結果、会社に払い込まれるはずであった500万円の出資金相当額が会社に生じた損害となり、Y1・Y2は設立時取締役または発起人として、任務懈怠に基づく賠償責任をZに対して連帯して責任を負う(53条1項、54条)。

さらに、任務懈怠につき悪意であるY1は第三者に対し損害賠償責任を負う(53条2項)。この場合、Y2が任務懈怠につき悪意・重過失であるときはY1と連帯して責任を負う(54条、53条2項)。

2.Y2による払込み

(1) 本件において、Y2の払い込みがいわゆる見せ金にあたり、無効とならないか。

(2) ここで、見せ金とは、発起人が払込取扱銀行以外の者から金銭を借り入れて株式の払込みにあて、会社の成立後にこれを引き出してその借入金を返済することである。

 見せ金は、金銭の移動による現実の払込みがある以上、有効な払込みであり、あとは設立後の取締役の任務違反の有無について論ずればよいとも考えられる。しかし、借入れから返済までを全体として考察すれば、見せ金による払込みは一連の行為が当初から計画された払込み仮装のためのからくりに過ぎない。

したがって、見せ金による払込みは無効である。

(3) しかし、見せ金による払込みか否かは、必ずしも明確とはいえず、会社成立後借入金を返済するまでの期間の長短、払込金が会社資金として運用された事実の有無、借入金の返済が会社の資金関係に及ぼす影響の有無などを考慮し、資本充実の原則から当該払い込みが会社財産の形成に寄与したかどうかという実質的観点より判断すべきと解する

(4) Y1の引出した1億円のうち5000万円については、Y2のR銀行からの借入金の弁済に充てられている。しかし、Zは、Y2に対する求償債権を放棄することで、実際にはY2に対する求償債権と設立費用債債務を相殺することを認めており、Y2に対する設立費用債務が消滅することで会社財産の形成に寄与したものといえ、Y2による払込みは、実質的に払込みの仮装とはいえない。

(5) よって、Y2の払込みは、有効である。

第2.設問(2)

1.預合い罪(965条)

2.特別背任罪(960条)

3.公正証書原本不実記載罪(刑法157条1項)

 

 

本当は昨日、商法をアップするつもりでしたが、答案を見直したら、いろいろと難があったので(まだあるかも…)、手直ししました。見せ金のあてはめが分かりにくいかもしれません。Law Practice商法の32ページを参考にしながら書いたのですが、それでもわかりにくいように思います。すいません。

 

 

Law Practice 商法〔第2版〕

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