Law Practise 民事訴訟法 基本問題4:当事者の確定

【実質的表示説】

1. Yは、Xに対し、請求異議の訴えを提起し、XA間の訴訟の判決はA死亡後になされたものであり無効判決であると主張することになる。

2. では、上記Yの主張は認められるか。XA間の判決の効力の有無が問題となる。

(1) まず、当事者の実在は二当事者対立構造からは訴訟の不可欠の前提として、訴訟要件となる。

したがって、当事者の死亡の場合、原則として却下判決がなされることになる。

(2) では、本件において被告は死亡したAか相続人であるYであるか。当事者の確定基準が問題となる。

当事者の確定基準については、当事者確定の基準の明確性を維持しつつ、具体的妥当性との調和を図る必要がある。

そこで、訴状の当事者欄の記載を中心に請求の趣旨・原因などいっさいの訴状の表示を合理的に解釈して判断すべき(実質的表示説)

本件で、訴状にAが被告と表示されており、訴状全体を見てもA以外の者が被告とされている事情がないことから、死者Aが当事者となる。

とすれば、当事者不在となるため裁判所は原則通りに訴えを却下すべきとも思える。

(3) しかし、相続人であるYが死者Aの名で応訴している以上、手続保障があったといえる。また、それまでの訴訟追行の努力を無に帰せしめるのも訴訟経済上妥当でない。

そこで、任意的当事者変更として、当事者を相続人に変更することができると考える。

ここで、任意的当事者変更の法的性質は、新当事者に対する新訴の提起と旧訴の取下げという2つの行為が複合されたものと解する。

したがって、本件において、上記の要件をそれぞれ充たす場合にXは被告を相続人Yに変更することができる。

3. 以上から、任意的当事者変更の要件を充足する場合、XA間の判決は適法であり、Yの訴えは認められない。

 

【規範分類説】

1. Yは、Xに対し、請求異議の訴えを提起し、XA間の訴訟の判決はA死亡後になされたものであり無効判決であると主張することになる。

2. では、上記Yの主張は認められるか。XA間の判決の効力の有無が問題となる。

(1) まず、当事者の実在は二当事者対立構造からは訴訟の不可欠の前提として、訴訟要件となる。

したがって、当事者の死亡の場合、原則として却下判決がなされることになる。

(2)では、本件において被告は死亡したAか相続人であるYであるか。当事者の確定基準が問題となる。

ア.当事者の確定基準については、これから手続を進めるにあたって誰を当事者として扱うかを考える段階(行為段階)と、既に進行した手続を振り返ってその手続の当事者は誰であったかを考える段階(評価段階)とを区別する必要がある。行為段階では当事者確定の基準の明確性・画一的処理の要請を重視すべきであり、訴状の当事者欄の記載を合理的に解釈して判断すべきであるが、評価段階では手続の安定や訴訟経済の要請を重視して、その紛争につき当事者適格をもつ者で、それまでの手続効果を帰せしめてよい程度にまで手続に関与する機会が現実に与えられていた者(実質的当事者)を当事者と解してよいと解する。

イ.本件において、相続人であるYが死者の名で応訴している以上、手続保障は尽くされており、それまでの訴訟追行の努力を無に帰せしめるのも訴訟経済上妥当でない。

ウ.したがって、Yが当事者であると解すべきである。

(3) よって、XA間の訴えでなされた判決は有効である。

3. 以上から、Yの主張に理由はなく、Yの訴えは認められない。

 

 規範分類説が判例と整合性があるような気がして、個人的には好みです。しかし、受験的には実質的表示説が通説でしょうし、他の答案との関連上、無視できないので両方の答案を用意しました。