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Law Practise 商法 No.4:現物出資

第1.株主代表訴訟

1. Xは、Y1-Y5に対し株主代表訴訟(847条1項)により「発起人、設立時取締役…の責任を追及する訴え」として以下の責任を追求する。

2.価額填補責任

(1) 現物出資は、変態設立事項として、資本充実の原則から厳格な規制に服し、定款の記載(28条1号)及び検査役の調査(33条1号)が必要とされ、発起人らは連対して価額填補責任を負う(52条1項)。

Y3の出資した土地付きの山荘は時価100万円の価値しかないにもかかわらず、2000万円と評価され、その旨の登記がなされていることから、現物出資財産の価額が定款に記載された価額に「著しく不足する」(52条1項)にあたり、価額填補責任として以下の責任を負う。

(2)Y3の責任

Y3は、現物出資した発起人すなわち、「財産を給付した者」(52条2項括弧書き)にあたり、免責事由は適用されないから(無過失責任)、価額填補責を負う。

(3)Y1・Y2に対する請求

ア.Y1・Y2は設立時取締役ではあるが、現物出資者でないことから、52条2項各号の免責事由に該当しない限り、価額填補責任を負う。

イ.免責事由の有無

(ア)現物出資財産について検査役の調査(33条1項)経ている場合には、発起人等の責任は免 責される(52条2項1号)。本件では、検査薬の調査を経ていないものの、弁護士Y4・不動産鑑定士Y5の鑑定評価を得ているから(同10項3号)、検査薬の調査は不要となり、52条2項1号にあたる。

(イ) また、発起人等が「職務を行うについて注意を怠らなかったこと」が免責事由となっている(52条2項1号)。本件ではY1・Y2はY3と共謀のうえ本件現物出資の価額を高額に評価したものといえ、職務を行うについて注意を怠らなかったとはいえない。

(ウ) したがって、Y1・Y2に免責事由は存しない。

ウ.よって、Y1・Y2は価額填補責を負う。

(4)Y4・Y5に対する請求

ア.Y4・Y5は33条10項3号の証明をした者であり、「証明をするについて注意を怠らなかっ たことを証明」しない限り、発起人等と連帯して、価額格填責任を負う(52条3項)。

イ.本件ではY4・Y5はY1らと共謀のうえ本件現物出資の価額を高額に評価したものといえ、証明について注意を怠らなかったとはいえない。

ウ.したがって、Y1・Y2に免責事由は存せず、Y4・Y5は価額填補責を負う。

3.任務懈怠責任

(1)発起人・設立時取締役が株式会社の設立について任務懈怠があった場合には会社に対し損害を賠償する責任を負うとされる(53条1項)。

(2) Y3は発起人であり、Y1・Y2は設立時取締役である。

(3) Y1-Y3は、共謀のうえY3が現物出資した安価な不動産を高額に評価した点に任務懈怠がある。

(4) また、損害の発生が必要とされるところ、現実に財産が給付されている以上会社に損害が発生していないと考えることも可能である。しかし、定款に記載された価額の財産が給付されていない以上、その不足額分の損害が会社に発生しているものと解すべきである。

(5) よって、Y1-Y3は会社に対し、連対して損害賠償責任を負う(53条1項、54条)

第2.対第三者責任

1. Xとしては、Y1-Y3に対し53条2項に基づき損害賠償請求をすることが考えられる。

2. 株主も「第三者」にあたるのか問題となるが、取締役の行為により損害を被っている以上株主を同条の適用から排除する必要はないから、株主も「第三者」にあたると考える。

3. 次に、同条による請求には取締役がその職務を行うについて「悪意又は重大な過失」が必要であるところ、悪意・重過失の対象は、任務懈怠について存すれば足りると解する。

  Y1-Y3は、共謀のうえY3が現物出資した安価な不動産を高額に評価しており、任務懈怠について故意が認められる。

4. よって、Y1-Y3はに対し、Xに対し、連対して損害賠償責任を負う(53条2項、54条)