Law Practise 商法

Law Practise 商法 No.21:新株発行の無効事由

1. Xは、Yに対し、新株発行無効の訴え(828条1項2号)を提起することが考えられるところ、同号は無効事由を明記していないことから、その判断基準が問題となる。 株式発行に暇疵がある場合、原則として誰でもいつでも無効主張できるはずである。しかし、設…

Law Practise 商法 No.20:有利発行・不公正発行と取締役の責任

第1.設問(1) 1. Xは、Yに対し株主代表訴訟(847条1項)により任務懈怠責任(423)に基づく損害賠償請求は 認められるか。 2. そこで、Yが「任務を怠った」といえるかが問題となる。 (1) 取締役は、善管注意義務(330条、民法660条)および忠実義務(3…

Law Practise 商法 No.19:新株・新株予約権の不公正発行

第1.設問(1) 1. XによるYの新株発行の差止請求(210条)は認められるか。 新株発行の差止めの要件は、①210条1号・2号列挙事由の存在および②株主が不利益を受けるおそれがあること(210条柱書)である。以下、各要件について検討する。 2.①について (1…

Law Practise 商法 No.18:新株予約権の無償割当

第1.設問(1) 1. XのYに対する新株予約権発行の差止請求(247条)は認められるか。 2. しかし、247条は募集新株予約権の発行(238条)を対象としており、新株予約権の無償割当てに直接適用しえない。しかし、有償発行も無償発行も株主の地位に変動を生ず…

Law Practise 商法 No.17:新株の有利発行

1. XらのYに対する新株発行の差止請求(210条)は認められるか。 新株発行の差止請求が認められるためには、①210条1号・2号事由の存在および②株主が不利益を受けるおそれが必要である。 2.①について (1)法令又は定款に違反について(210条1号) ア.第三…

Law Practise 商法 No.16:違法な自己株式取得の効力

No.16:違法な自己株式取得の効力 第1.設問(1) 1. Yは、Xに対し本件自己株式取得の無効主張をなしうるか。 2. 特定の株主からの自己株式の取得には、①株主総会の特別決議(160条1項、309条2項2号)及び②株主への通知(160条2項)が必要であるところ、X…

Law Practise 商法 No.15:契約による株式の譲渡制限

1. 127違反の有無 (1) 株主は、その有する株式を自由に譲渡することができるのが原則である(株式讓渡自由の原則・127条)。 Y社は従業員持ち株制度を採用し、本件合意により譲渡先とその価額を制限している(契約による株式譲渡制限) かかる合意は、127…

Law Practise 商法 No.14:定款による株式の譲渡制限

第1.設問(1) 1. X社のY1社に対する株主の地位不存在確認請求は認められるか。 2. X社は定款で譲渡制限が設けられていたことから、CからY1社に対するX社取締役会の承認を欠く株式譲渡の効力が問題となる。 (1) 株主の投下資本の回収を図る必要性がある…

Law Practise 商法 No.13:個別株主通知(構成のみ)

1.X:価格決定の申立て(117Ⅱ) →Y社の反論:個別株主通知(保振147Ⅳ、154Ⅲ-Ⅴ)なし 2.価格決定の申立てが「少数株主権等」(147Ⅳ)に含まれるか? (1)「少数株主権等」=集団的権利行使がなされる場合以外の権利 ∵権利行使者確定方法が総株主通知と個別…

Law Practise 商法 No.12:名義書換の未了

第1.設問(1) 1. Aは、Y社に対し、本件割当撤回の無効を主張し、株式の交付請求は認められるか。 2. Aは、自己の株式をBに譲渡しており、株主名簿の名義書換は未了である。そこで、AがY社に対し、株主の地位を対抗しうるかが問題となる。 (1) Y社は株…

Law Practise 商法 No.11:利益供与

第1.設問(1) 1. Xは、A社より利益供与を受けた筆頭株主Zの議決権行使により成立した本件決議に「株主総会等の…決議の方法」の法令違反(831条1項1号)にあたるとして、株主総会等の決議の取消しの訴えを提起することが考えられる。 以下、法令違反の有無…

Law Practise 商法 No.10:株主平等の原則

第1.設問(1) 1. Xは、Yに対し、本件契約に基づく金員支払請求をなしうるか。本件契約は大株主であるXに対してのみ金員を支払うことを内容としているものであるから、株主平等原則(109条1項)に反し無効とならないかが問題となる。 2. 株主平等原則とは…

Law Practise 商法 No.9:全部取得条項付種類株式

第1.設問(1) 1.Xの地位 (1) Y社は、種類株式発行会社でない。しかし、このような会社でも、①種類株式発行のための定款変更決議(108条1項7号、466条、309条2項11号)、②取得価額決定方法(171条1項1号)を定める定款変更決議(108条2項7号、466条、309…

Law Practise 商法 No.8:種類株式

第1.設問(1) 1. Xの株式は、議決権制限種類株式(完全無議決権株式、108条1項3号)であり、議決権を行使できる事項に限って少数株主権を行使できる。 2. では、Xは株主総会議事録閲覧・謄写請求権(318条4項)を行使できるか、318条4項は「株主及び債権…

Law Practise 商法 No.7:相続による株式の準共有

第1.設問(1) 1.株主総会決議取消訴訟の可否 (1) Xとしては、招集手続きに瑕疵があるとして、株主総会決議取消訴訟(831条1項1号)を提起することが考えられる。 (2) 本件では、株式の共同相続(民法898条)により株式が準共有(同264条)の状態にあ…

Law Practise 商法 No.6:払込みの仮装

第1.設問(1) 1.Y1による払込みの効力 (1) 預合とは、発起人が払込取扱銀行から金銭を借り入れ、これを設立中の会社の預金に振り替えて株式の払込みにあてるが、その借入金を返済するまではその預金を引き出さないことを約することであり、Y1の払込みは…

Law Practise 商法 No.5:定款に記載のない財産引受けの効力

第1.設問(1) 1. 本件購入契約は、「会社の成立後に財産を譲り受けることを約したもの」(財産引受)であり、定款に記載しなければ効力を生じない(28条2号) したがって、Xは甲会社の定款にその旨の記載がない限り、Y会社に請求することができないのが原…

Law Practise 商法 No.4:現物出資

第1.株主代表訴訟 1. Xは、Y1-Y5に対し株主代表訴訟(847条1項)により「発起人、設立時取締役…の責任を追及する訴え」として以下の責任を追求する。 2.価額填補責任 (1) 現物出資は、変態設立事項として、資本充実の原則から厳格な規制に服し、定款の…