Law Practise 民法Ⅱ No.16:贈与の撤回

1.書面によらない贈与の撤回

(1)Kg:贈与契約の締結

(2)抗弁

ア.書面の存在(許可申請書が作成されていた場合)➡契約書である必要はない

イ.引渡し済み(履行が終わっている)

➡再抗弁:書面によらない農地の贈与契約は、農地法3条1項による知事の許可を受けるまでは、右農地の引渡しがあった後でも取り消すことができる(最判昭41・10・7民集20-8-1597)。

2.忘恩行為による贈与の撤回

(1)理論の妥当性(cf.ドイツ民法):負担付贈与として解除すれば足りる

(2)Kg

①贈与契約の締結

②負担を履行しないこと

③解除の意思表示

 

 【関連問題】

 1.死因贈与の撤回(554条、1022条)

2.Yの反論:Xの面倒を看続けたこと

 ➡ 負担の履行期が贈与者の生前と定められた負担付死因贈与の受贈者が負担の全部又はこれに類する程度の履行をした場合には、右契約締結の動機、負担の価値と贈与財産の価値との相関関係、契約上の利害関係者間の身分関係その他の生活関係等に照らし右契約の全部又は一部を取り消すことがやむをえないと認められる特段の事情がない限り、民法1022条、1023条の各規定は準用されない最判昭57・4・30民集36-4-763)。

 

Law Practice 民法II 債権編〔第2版〕

Law Practice 民法II 債権編〔第2版〕

  • 作者: 千葉恵美子,潮見佳男,片山直也
  • 出版社/メーカー: 商事法務
  • 発売日: 2014/03/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログを見る
 

 

 

Law Practise 民事訴訟法 発展問題18:類似必要的共同訴訟

第1.設問前段

1. X1〜X3がA県に対して提起した損害賠償請求(住民訴訟)とX4〜X6がA県に提起した同様の訴訟は、別個に進行させることが許されるか。

2. 訴訟を別個に進行させることが許されるかは合一確定が要請されるか、すなわち本件訴訟が「共同訴訟人の全員について合一にのみ確定すべき場合」(40条1項)に該当するかが問題となる。

(1) ここで、「共同訴訟人の全員について合一にのみ確定すべき場合」(必要的共同訴訟)とは、紛争の統一的一回的解決の必要性があり、判決の効力が共同訴訟人全員に及ぶ場合を指すと考えられる。

(2) 本件訴訟は、住民訴訟地方自治法242条の2)であり、普通地方公共団体の財務行政の適正な運営を確保して住民全体の利益を守るために、当該普通地方公共団体の構成員である住民に対し、いわば公益の代表者として同条1項各号所定の訴えを提起する権能を与えたものであり、同条4項が、同条1項の規定による訴訟が係属しているときは、当該普通地方公共団体の他の住民は、別訴をもって同一の請求をすることができないと規定しているのは、住民訴訟のこのような性質にかんがみて、複数の住民による同一の請求については、必ず共同訴訟として提訴することを義務付け、これを一体として審判し、一回的に解決しようとする趣旨に出たものと解される。そうであれば、住民訴訟の判決の効力は、当事者となった住民のみならず、当該地方公共団体の全住民に及ぶものというべきであり、複数の住民の提起した住民訴訟は、民訴法六二条一項にいう「共同訴訟人の全員について合一にのみ確定すべき場合」に該当する。

(3) また、同条1項は、「普通地方公共団体の住民」に当事者適格が認められるとしており、住民全員での提訴を必要としていないから、いわゆる類似必要的共同訴訟と解するのが相当である

3. したがって、本件訴訟は、「共同訴訟人の全員について合一にのみ確定すべき場合」に該当するから、両訴訟を別個に進行させることはできない。

第2.設問中断

1. 本問では、訴訟開始後にX4が死亡した場合の影響が問題となる。

2. 前述のとおり、本件訴訟は、類似必要的共同訴訟にあたる。ここで、類似必要的共同訴訟とは、訴訟の開始にあたっては各自単独でも当事者適格を有するが、共同訴訟となった場合には合一確定が要請される共同訴訟類型である。

必要的共同訴訟においては、共同訴訟人の一人について訴訟手続の中断又は中止の原因があるときは、その中断又は中止は、全員についてその効力を生ずる(40条3項)。

3. X4の死亡は、訴訟の中断事由である「当事者の死亡」(124条1項1号)にあたり、訴訟代理人がいる場合(124条3項)を除き、相続人等が受継するまで中断することになる。

第3.設問後段

1. 本問では、上告しなかったX2および訴えを取り下げたX5の訴訟上の地位が問題となる。

2. 必要的共同訴訟では、共同訴訟人の一部の者がした訴訟行為は全員の利益においてのみ効力を生ずるとされる(40条2項)ところ、Xらの上告によりX2およびX5も上告人の地位にとどまるかが問題となる。

(1) この点、上訴は、上訴審に対して原判決の敗訴部分の是正を求める行為であるから、類似必要的共同訴訟において共同訴訟人の一部の者が上訴すれば、それによって原判決の確定が妨げられ、当該訴訟は全体として上訴審に移審し、上訴審の判決の効力は上訴をしなかった共同訴訟人にも及ぶものと解される。

(2) しかし、本件において、合一確定のためには右の限度で上訴が効力を生ずれば足りる上、住民訴訟の性質にかんがみると、公益の代表者となる意思を失った者に対し、その意思に反してまで上訴人の地位に就き続けることを求めることは、相当でないだけでなく、住民訴訟においては、複数の住民によって提訴された場合であっても、公益の代表者としての共同訴訟人らにより同一の違法な財務会計上の行為又は怠る事実の予防又は是正を求める公益上の請求がされているのであり、元来提訴者各人が自己の個別的な利益を有しているものではないから、提訴後に共同訴訟人の数が減少しても、その審判の範囲、審理の態様、判決の効力等には何ら影響がない。

したがって、自ら上訴をしなかった共同訴訟人は上訴人にはならない。

(3) また、上訴をした共同訴訟人のうちの一部の者が上訴を取り下げても、その者に対する関係において原判決が確定することにはならないが、その者は上訴人ではなくなるものと解すべきである。

3. よって、X2・X5は上告人の地位を有しない。

 

 

Law Practice 民事訴訟法〔第2版〕

Law Practice 民事訴訟法〔第2版〕

 

 

Law Practise 商法 No.56:表見支配人

1. Aは、Bの振り出した手形(以下、本件手形)に対しY福岡支店長の名義で裏書(以下、本件裏書)をしている。そこで、Xは、Aが「表見支配人」(会社法(以下、法令名略)13条)であるとして、Yに対する手形金請求をすることが考えられる。

ここで、表見支配人とは、包括的代理権を有しない使用人であって、会社の本店又は支店の事業の主任者であることを示す名称を付した者であり、使用人とは、会社と雇用関係にあることが必要である。しかし、Aは、Yと雇用関係にないことから、表見支配人に当たらない。

  したがって、本件に13条を直接適用しえない。

2. では、13条を類推しえないか。

(1) 同条の類推適用がなされるためには、①「会社の本店又は支店の事業の主任者であることを示す名称を付した」外観の存在、②本人の帰責性(外観への与因)そして③第三者の信頼が必要である。

(2) まず、①Aは本件手形にY福岡支店長の名義で裏書をしており、「会社の本店又は支店の事業の主任者であることを示す名称を付した」外観が存在する。

(3) 次に、②Yは、Aに対し支店長代理の肩書の使用を明示的に許可しているにすぎず、支店長の肩書の使用を許したわけではない。しかし、YはAに対し支店長の権限を包括的に委任し、Aは支店長名義で支店長の業務の一切を行っていたのであり、支店長の肩書の使用を黙示的に許していたといえ、①の外観への与因が認められる。

(4) また、①②に対する③第三者(X)の信頼について、第三者の善意・無重過失が必要と解するところ、Xは被裏書人Cの裏書が正当になされたという言葉を信じているが、仮にこれについてXの善意無重過失が認められるとしても、表見法理における第三者は、当該取引の直接の相手方に限られるものであり、手形行為の場合には、この直接の相手方は、手形上の記載によって形式的に判断されるべきものではなく、実質的な取引の相手方をいうものと解すべきであり、Xは13条ないしその類推適用により保護される第三者には含まれない。

(5) したがって、本件において13条の類推適用はなしえない。

3. 以上から、XのYに対する手形金請求は認められない。

 

Law Practice 商法〔第2版〕

Law Practice 商法〔第2版〕

 

 

Law Practise 民法Ⅱ No.15:売買の瑕疵担保責任(不特定物)

第1.設問1

1.XのYに対する債務不履行責任

(1)損害賠償請求

ア.Stg債務不履行に基づく損害賠償請求権

イ.Kg

①売買契約の締結

②債務の本旨に従った履行がないこと

③損害の発生及びその額

ウ.Yの抗弁

(ア)債務不履行責任適用不可:不特定物の売買において、売主が瑕疵ある物を給付したのに対し買主がこれを受領した以上は、不完全ながら契約の履行があったもので、買主は危険移転の時期を標準として瑕疵担保による権利を行使しうるのみである(旧判例、大判大14・3・13民集4-217)。

  ➡不特定物の売買において給付されたものに瑕疵のあることが受領後に発見された場合、買主がいわゆる瑕疵担保責任を問うなど瑕疵の存在を認識した上で右給付を履行として認容したと認められる事情が存しない限り、買主は取替えないし追完の方法による完全履行の請求権を有し、またその不完全な給付が売主の責めに帰すべき事由に基づくときは、債務不履行の一場合として損害賠償請求および契約解除権をも有する最判昭36・12・15民集15-11-2852)。

 (イ)帰責性不存在:当該瑕疵は地震により発生 →保管義務(400条)違反なし

(2)完全履行請求

ア.Stg債務不履行に基づく完全履行請求権

イ.Kg

①売買契約の締結

②債務の本旨に従った履行がないこと

③追完が可能であること(完全履行が可能であること)

ウ.Yの抗弁:同上

2.瑕疵担保責任

(1)Stg:570条に基づく損害賠償請求権

(2)Kg

①売買契約の締結

②買主が売主から目的物を受領

③通常人の通常の注意では発見できない瑕疵があったこと

④買主が②の受領後③の瑕疵を認識して履行として認容したこと

⑤損害の発生及びその額

(3)抗弁:買主の悪意・重過失

ア.「隠れた」=契約時において、瑕疵が表見しておらず、一般人の見地から容易に発見できず、買主が発見しえなかったこと買主の善意・無過失

 ➡法定責任説:契約後に生じた瑕疵は保管義務(400条)違反の問題(債務不履行

 イ.再抗弁

(ア)契約責任説:売主が目的物を支配できる状況下で発生した瑕疵については売主が責任を負う

(イ)売主の悪意・過失(信義則違反)

第2.設問2

1.XのYに対する損害賠償請求

(1)Stg:570条に基づく損害賠償請求権

(2)Kg

①売買契約の締結

②買主が売主から目的物を受領

③通常人の通常の注意では発見できない瑕疵があったこと

④買主が②の受領後③の瑕疵を認識して履行として認容したこと

⑤損害の発生及びその額

(3)抗弁:除斥期間経過

(4)再抗弁:除斥期間前の請求権の保全

①裁判外の請求でも可

②瑕疵担保による損害賠償請求権には消滅時効の規定の適用があり、この消滅時効は、買主が売買の目的物の引渡しを受けた時から進行すると解するのが相当である。(最判平13・11・27民集55-6-1311)

2.完全履行請求 ⇒法定責任説では不可

 

Law Practice 民法II 債権編〔第2版〕

Law Practice 民法II 債権編〔第2版〕

  • 作者: 千葉恵美子,潮見佳男,片山直也
  • 出版社/メーカー: 商事法務
  • 発売日: 2014/03/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログを見る
 

 

Law Practise 民事訴訟法 発展問題17:固有必要的共同訴訟(2)

1. 合一確定の必要があり、かつ、共同訴訟とすることが法律上強制される訴訟を固有必要的共同訴訟(40条1項)という。

本件において、X1〜X25(以下、Xら)は、Yに対し入会権確認の訴え(以下、本件訴訟)を提起しようとしているところ、Xら同じく入会集団の構成員であるZ1~Z30(以下、Zら)らは訴訟提起に同調しようとしていない。本件訴訟が固有必要的共同訴訟(40条1項)であれば、共同訴訟人がそろわなければ当事者適格を欠き、訴えが却下されることになる。  

2. そこで、本件訴訟の「目的が共同訴訟人の全員について合一にのみ確定すべき場合」(40条1項)であり、固有必要的共同訴訟にあたるかが問題となる。

(1) 固有必要的共同訴訟の判別基準については、実体法的観点、すなわち管理処分権の実体法的性格から考えると、財産の管理処分権が数人に帰属している場合には、その数人を共同訴訟人としなければ、紛争の実効的解決はありえない。したがって、実体法上の管理処分権の帰属を重視し実体法上単独で処分可能な場合は、訴訟上も個別提起による通常共同訴訟であるが、実体法上全員でのみ処分可能な場合は、訴:訟上必要的共同訴訟となると解する。

もっとも、固有必要的共同訴訟とされた場合、共同訴訟人となる者が1人でも欠けると、その訴訟は不適法となり、また、原告の請求を争わない者も手続的理由により被告としなければならないのは、手続上不経済である。そこで、一定の場合には、持分権、保存行為(民法252 ただし書)、不可分債権(428条)の理論等を駆使して、固有必要的共同訴訟の範囲を縮小し、個別提起を許容すべきと解する。

(2) 本件訴訟において、入会権者全員の有する1個の入会権そのものが紛争の対象であり、入会権は総有関係 にあると解され、入会権は、実体法上、全員でのみ管理処分が可能な権利である。また、原告側共有のときには共有者が誰であるか明らかであるから、全員を原告としても不都合は少なく、手続き上の不経済も存しない。

(3) 本件訴訟の目的は「共同訴訟人の全員について合一にのみ確定すべき場合」(40条1項)であり、固有必要的共同訴訟にあたる。

3. このように解するならば、本件訴訟の提起は不適法となるようにもみえる。しかし、共有者間に非同調者がいる場合に全員が必ず原告にならなければいけないとすると、一部の者が反対する限り、他の者の訴権が実質的に否定されてしまうことになる。また、原告になることを拒んだ者の利害は、被告側の利害と共通するといえ、利害の分布状況が一致することから、Xは、非同調者であるZらを被告として訴え提起することも可能と解すべきである。

4. 以上から、Xらは、YおよびZらを被告として本件訴えを提起しうる。

 

Law Practice 民事訴訟法〔第2版〕

Law Practice 民事訴訟法〔第2版〕

 

 

Law Practise 商法 No.55:営業譲渡と商号続用者の責任

1. Yは、本件ゴルフ場を経営するAの会社分割により設立され、A同様「Bゴルフ倶楽部」の名称を用いて、本件ゴルフ場を経営している。そこで、Xは、Yに対して、会社法22条1項に基づき預託金の返還を請求しえないか。

2. 会社法22条1項が適用されるためには、①「事業を譲り受けた会社」(譲受会社)が②「譲渡会社の商号を引き続き使用する場合」であること(商号の続用)が必要である。

しかし、①本件では事業の移転に際して、事業譲渡ではなく、会社分割の形式が用いられている。また、②Yは、「Bゴルフ倶楽部」の名称は用いているものの、Aの商号は用いていない。

したがって、同項を適用しえないのが原則である。

3. では、同項の類推適用はなしえないか。

(1) まず、上記①の点について、22条1項の趣旨は商号の続用がなされる場合、権利外観法理に基づき債権者を保護する点にある。しかし、商号の続用がなくても、事業主体を示す名称を続用する場合、債権者には事業主体の交代を認識することが困難である。そこで、事業主体を表示するものとして用いられている名称が続用されている場合、特段の事情がない限り、「譲渡会社の商号を引き続き使用する場合」と同視しうると解される。

本件において、「Bゴルフ倶楽部」の名称がゴルフ場の事業主体を表示するものとして用いられ、ゴルフ場の事業が譲渡され,Aが用いていたゴルフクラブの名称をYが引き続き使用している。Yは、当該ゴルフクラブの会員によるゴルフ場施設の優先的利用を拒否したなどの特段の事情も存しない。

したがって、「譲渡会社の商号を引き続き使用する場合」と同視しうる。

(2) 次に、会社分割に伴いゴルフ場の事業が他の会社又は設立会社に承継される場合、法律行為によって事業の全部又は一部が別の権利義務の主体に承継されるという点においては,事業の譲渡と異なるところはない。

   したがって、会社分割は「事業を譲り受けた」場合と同視しうる。

(3) よって、Yは、22条1項の類推適用により、Xが交付した預託金の返還義務を負う。

4. 以上から、Xの預託金返還請求は認められる。

 

Law Practice 商法〔第2版〕

Law Practice 商法〔第2版〕

 

 

Law Practise 民法Ⅱ No.14:売買の瑕疵担保責任(特定物)--訂正版

第1.設問1

1.YのXに対する瑕疵修補請求

(1)Stg:570条に基づく完全履行請求権としての損害賠償請求権

(2)Kg

①特定物を目的とする売買契約の締結 →目的物:建物+敷地賃借権

②通常人の通常の注意では発見できない瑕疵の存在

(3)Xの反論:瑕疵担保責任の効果は解除と損害賠償請求に限られる。

瑕疵担保責任の法的性質・効果

a.特定物の売主の義務は当該目的物を原状で引き渡すことにつきるが、契約当事者間の衡平から法が特別に認めた責任法定責任説)➡完全履行請求否定

b.特定物・不特定物を問わず、当該契約において予定された性質を備えた目的物を引き渡す義務が売買契約の内容となり、その義務違反により生じる債務不履行責任の特則契約責任説)➡完全履行請求肯定

2.YのXに対する損害賠償請求

(1)Stg:570条に基づく損害賠償請求権

(2)Kg

①特定物を目的とする売買契約の締結 →目的物:建物+敷地賃借権

②通常人の通常の注意では発見できない瑕疵の存在

③損害の発生及びその額 …履行利益(修補費用 + 転売利益)の賠償

(3)Xの反論

ア.Yの悪意

イ.目的物は賃借権 →賃借権の瑕疵は目的物の瑕疵に含まれない

  a.最判平3・4・2民集45-4-349:「建物とその敷地の賃借権とが売買の目的とされた場合において、右敷地についてその賃貸人において修繕義務を負担すべき欠陥が右売買契約当時に存したことがその後に判明したとしても、右売買の目的物に隠れた瑕疵があるということはできない。けだし、右の場合において、建物と共に売買の目的とされたものは、建物の敷地そのものではなく、その賃借権であるところ、…賃貸人の修繕義務の履行により補完されるべき敷地の欠陥については、賃貸人に対してその修繕を請求すべきものであって、右敷地の欠陥をもって賃貸人に対する債権としての賃借権の欠陥ということはできない

  b.学説:借地上の建物が売買の目的物である場合、継続的に使用できる状態で建物を譲渡することが契約の内容であり、敷地が安全性を備えていないときは、敷地の欠陥は賃借権自体の瑕疵として評価される

ウ.損害額は信頼利益の限度に限られる

  ※瑕疵担保責任における損害賠償の範囲

a.法定責任説 ➡信頼利益の限度

…売主に過失がある場合には、信義則により履行利益の賠償義務を認めるべき(我妻)

b.契約責任説 ➡履行利益も可

3.YのXに対する錯誤無効を理由とする不当利得償還請求

(1)Stg:不当利得に基づく利得金返還請求権

(2)Kg

  ①原告の損失

  ➁被告の受益

  ③①②間の因果関係

  ④②が法律上の原因に基づかないこと

   ❶意思表示に錯誤があること

   ❷❶が法律行為の要素に関するものであること

    ※法律行為の要素:「その錯誤がなかったら当該意思表示をしなかつたであろう (因果関係)といえるばかり でなく、通常人であつても 同様であろう(重要性)といえなければならない」(大判大3・12・15民 録20-1101等)

(3)Xの反論

ア.原告の重過失

イ.錯誤無効の主張は瑕疵担保の主張に優先するから上記の瑕疵担保責任は否定されるべき

  ※瑕疵担保責任と錯誤無効の優先関係

a.錯誤無効優先説(最判昭33・6・14民集12-9-1492)

b.瑕疵担保責任優先説

     

第2.設問2

1.YのXに対する損害賠償請求

(1)Stg:570に基づく損害賠償請求権

(2)Kg

①特定物を目的とする売買契約の締結

②通常人の通常の注意では発見できない瑕疵の存在

③損害の発生及びその額

2.Xの反論

(1)Yの悪意

(2)損害額

第3.【参考】YのAに対する請求

1.YのXに対する修繕義務の履行請求

(1)Stg:賃貸借契約に基づく修繕義務履行請求権

(2)Kg

①賃貸借契約の締結

②使用収益についての合意 or 目的物の性質

③目的物の毀損により収益に障害が生じていること

2.YのXに対する賃借目的物の瑕疵担保責任(559条、570条、566条)

(1)Stg:570条に基づく損害賠償請求権

(2)Kg

①賃貸借契約の締結

②通常人の通常の注意では発見できない瑕疵の存在

③損害の発生及びその額 

(3)Xの反論:Yの悪意

3.YのXに対する賃借目的物の瑕疵担保責任(559条、570条、566条)

(1)Stg:570条に基づく損害賠償請求権

(2)Kg

①賃貸借契約の締結

②通常人の通常の注意では発見できない瑕疵の存在

(3)Xの反論:瑕疵担保責任の効果は解除と損害賠償請求に限られる

 

Law Practice 民法II 債権編〔第2版〕

Law Practice 民法II 債権編〔第2版〕

  • 作者: 千葉恵美子,潮見佳男,片山直也
  • 出版社/メーカー: 商事法務
  • 発売日: 2014/03/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログを見る